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もしもGeminiの主人公が日吉と双子だったら。
「べ、別に若なんていなくても、寂しくなんかないんだからね。むしろせいせいする」
「ふん、それはこっちの台詞だ。部屋が広くなって助かる。ほら、新幹線が来るぜ。とっとと行っちまえ」
「そ、んなこと、言われなくても……わかっ、て……」
「なんだよ……泣いてるのか」
「うるさい、泣いてない。そっちだって声ふるえてる」
「それはおまえ、だろ」
憎まれ口を叩く余裕なんて、本当はない。勝手に滲んでくる涙を堪えるのが精一杯で、震える声なんてどうしようもない。
「……」
「……」
どうして、私たちってこんなところまでそっくりなんだろうね。これでしばらく会えないって言うのに、こんなにも素直じゃなくてさ。寂しいのに、どうしようもなく離れがたいのに。つらいよ。くるしいよ。ねぇ。若、若。
「離れたくないよ……」
そばに、いたいよ。
だって、大好きなんだ。華奢だけどごつごつした腕も、細くて長い指も、気の強い瞳も、きゅっと結ばれた薄い唇も、ぺらぺらの体も。強く抱きしめてくれて、頭を撫でてくれて、優しく見つめてくれて、薄く微笑んでくれて、いつだって、寄り添い合ってくれて。
離れなきゃいけない。行かなきゃいけない。
「……大丈夫だ、泣くな」
「う、うう」
ずび、と鼻をすする音が聞こえた。若だって、泣いてる。彼を抱きしめる私の肩が少し濡れた。彼の肩も少し濡らした。
「大丈夫だ」
「……うん、大丈夫」
「ああ」
「「離れていても、いつも一緒だ」」
重なった言葉にお互い渋い顔をして、涙の止まった腫れぼったい瞼を少しこする。痛かった。若の瞼が赤くなってる。きっと私も。
「なんでハモるかな」
「こっちが聞きたい」
「真似すんなよ、若」
「こっちの台詞だ」
いつも通りの言い合い。かけがえのないものだと気づいたこの日常を、噛み締めるように、一言一言。ねぇ、明日からは、これが日常じゃなくなってしまうんだね。
「もう、行く」
「……ああ」
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
手を振って、私たちは笑った。
若の笑顔は泣いてるみたいだった。
こういうのもありかなと。ツンデレ双子いいですね。