影踏み(音トキ)
「うわぁー、長いなぁ」
夕陽の中二人で帰っていると音也がそう言い出した。
「何がですか?」
「影だよ影、ほら、すっごく長い」
「ああ、
確かに、長いですね。」
夕陽に当たれば影は長くなる。
これといって珍しくないだろうに、何故か音也は嬉しそうにはしゃいでいた。
何がそんなに嬉しいのか私には全く見当はつかなかったけれど、
それはよくある事で、音也が楽しそうならそれていい気もした。
「トキヤ」
ふと名前を呼ばれて我にかえると音也は前を向いていて後ろにいる私には音也の顔が見えなかった。
……ただ顔が見えなかっただけ、なのに何故か音也が遠くへ行ってしまう気がして少し不安になった。
「さっきさ、俺の影とトキヤの影重なったんだ。
そんだけなんだけど、それが凄く嬉しって…2人でずっといたいなって思った。」
振り向いた音也は笑っていた…少し哀しそうに。
その笑顔のまま口を開く。
「…でも、人の気持ちって変わっちゃうんだ。
時間が経つとね、簡単に。
それでも俺は今このトキヤへの気持ちは変わらないって自信を持って言える。
けどトキヤは、トキヤは俺じゃないから、いなくなっちゃうんじゃないかって……恐くなるんだ。
だから、こうやってさ」
音也が下を見たので私も下を見ると、音也が私の影を踏んでいた。
「影を踏んだらいなくならない気がしない?」
そう言って笑う音也の笑顔は何時もの笑顔に戻っていた。
「……そうですか…なら、私も踏ませて下さい。」
音也の元へ行き影を踏む。
「私も、音也とずっと一緒に居たいですから。」
そう言ってチラリと音也を見るときょとんとした顔があった。
が、それも一瞬で何時もの無邪気な笑顔になる。
「じゃあ、一生離さないから。」
*影踏み
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衝動的に書きました。
何と無く影を踏み合って欲しくて書きました←