やっぱり君を殺してしまうかもしれない。(070407)

『ずっと一緒』

なんて、言われて、抱き締め合って、愛し合って、嬉しくって、幸せで

でもその反面、ずっと一緒になんて無理だと、何時かはこの関係だって崩れるだろうと、消えてしまうだろうと、不安になって、恐くなる。


幸せになればなるほど、
相手を好きになればなるほど、
不安は、恐れは比例する。

君を失ってしまったら?
そう考えてしまう。

君を失ってしまうくらいなら、君を俺の手で殺してしまいたい。

そんな事を考えてしまう。

今は思うだけで済んでも今後、もし実行してしまったら?

君を、殺してしまったら―――?





「錫也!」

ふと名前を呼ばれて俯いていた顔をあげると心配そうにこちらを見ている一樹と目があった。

「一樹…?なんで……」

一樹の後ろに映る教室は俺のクラスで、窓からは夕日がのぞいていた。

今日は放課後生徒会があるとあいつが言っていたはずなのに、

そう疑問に思っているとぎゅっと手を握られた。
いつの間にか冷めていたらしい俺の手に一樹の温もりが伝わってくるのが分かった。

「大丈夫だ」

何が、

そう言おうと開いた口は開いただけで息が詰まって声が出ない。

代わりにじわりと目頭が熱くなって気付いたら涙が溢れていた。

そんな俺をぎゅっと一樹は抱き締める。

ぽろぽろと流れる涙で一樹のシャツが濡れていく。

それでも一樹は抱き締めるのを止めるどころか更に強く抱き締めた。

「…大丈夫だから。」

そう呟くように言われた言葉に更に涙が溢れた。



*やっぱり君を殺してしまうかもしれない。




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