偶然と言う名の(キセキ虹)




そよそよと頬を撫でる風は近くに海があるせいかほのかに磯の香りがする。

自転車を漕ぎながらぼーと空を見ているとふと騒ぎ声が聞こえた。

ここの近くには確か大きな旅館があったはずだとそちらに視線をずらすと何台かバスが止まっていた。

遠目からは少し分かりにくいが何かの部活のようだった。

それを見ていると不意に自身の中学での思い出がフラッシュバックする。

長年、といっても2年程度だが触れていなかったバスケットボールの感触が思い出されて思わず苦い顔になる。

逃げたのにまだ未練があるのか、

そんな自分に1度溜息を吐いてから虹村は旅館の反対側にある海を眺めた。

その時だった。

「っ!!おいっ!!!」

誰かの声がして逸らしていた目線を前に戻すとそこには人が居た。

「っ!?」

あまりの近さに上手くよけるきれずに自転車が倒れる。
が元運動部だけあってか幸い虹村自身は怪我をすることもなく自転車だけが転けた状態だった。

それより当たった人物が無事かと振り向くとさっきの声の主だろう、眉毛に特徴のある長身の男が走ってきていた。

「おいっ!大丈夫かよ?!」

そう問われた轢かれかけた男がなんでもないように「はい」とだけ答えた。

そんな二人を見ながら余所見をしてしまっていたせいで当たりそうになったことを謝ろうと口を開いた時だった。

轢かれそうになった方の男とパチりと目が合った。

途端に無表情だったそれが驚きの色に染まる。

それは虹村も同じだった。

そんな二人の様子を見て眉毛に特徴のある男が不思議そうな顔をして轢きそうになった男に話し掛けた。

「どうかしたのか黒子?」

黒子

それを耳にした瞬間、倒れていた自転車を掴み跨るやいなあっという間もなしに走り出した。

「虹村さん!!!」

普段聞く事のない黒子の大声に眉毛に特徴のある男、元言い火神がびくっとした

その数秒、

火神の後ろには赤司、緑間、紫原、青峰、黄瀬とキセキ世代と呼ばれる全員が集合していた。

「テツヤ今虹村さんといったか?」

「はい、あの自転車の人、間違いなく虹村さんでした!!」

「でかしたテツ!!」

「早く追うのだよ!!」

「みどちんに言われなくても行くしー」

「絶対逃がさないっス!! 」

そういうないなや青峰、黄瀬、紫原が走り出す。

「真太郎、桃井に」

「ああ、分かっている」

携帯を片手に緑間にそう告げると赤司は何処かへと向かう。

それに続いて緑間も旅館に戻る。

一瞬の出来事に呆気に取られる火神だったがふと黒子はどうしたんだと前を見ると、
最初と全く同じ位置にいた。

「.........お前は何もしねぇのか」

「ええ、体力もないですしね、僕は待機組です。」

「.........そうかよ。」

何故かさっきの一瞬でどっと疲れた火神であった。


***



当日虹村は中学No.1のPFと言われていた。

それに対して虹村自身、努力もしていたしそれなりに自信もあったため、悪い気はしなかった。

けれど、それも長くは続かなかった。

帝光に入ってきた一つ下の後輩達、後にキセキ世代と呼ばれる彼らの存在が現れたからだ。

彼らが才能を開花させてから、どんどんと差は開いていくばかりだった。

いくら努力しても縮まらないそれに、

その彼らを差し置いて自分が主将という立場に、

そんな自分を変わらず慕ってくる彼らに、

当日の虹村は耐えられなかった。

丁度その時父親が病にかかって家も忙しなくなっていた。

虹村はちょうどいいと思った。

父親の不調を理由に虹村は赤司に主将を譲り、程なくして部活自体を辞めた。

それから虹村が彼らの前に姿を表すことはなかった。

そして彼らも虹村の前に現れることはなかった。否、現れることができなかった。

何故なら彼らは虹村の居場所を知らなかったのだ。

虹村は中学を卒業してから都心を離れ、家族と共に母方の田舎に引っ越していた、

けれどそれを虹村は誰にも言わなかったか。

わざとだった。

当日の虹村には後輩達は自分の人生の歯車を狂わした、バスケを嫌いにさせた憂鬱なモノでしかなかった。

だから会わない様に、誰にも、友人にも言わなかった。








キセキ世代が現れてから中学バスケは変わったように虹村は思う。

圧倒的な力の差、

相手が戦意喪失させてしまうのも仕方が無いと思えるほどのその差を見せつけられて絶望にも似た表情を見せる選手たち、

つまらなそうにプレイをする元後輩達、

それを取り囲む何とも言えない殺伐とした空気。

ぼんやりとブラウン管の中に映る3年になった彼らの試合映像を見詰めながら虹村はそこに自分が居ないことに安堵と虚しさと苛立ちを感じてた。

虹村は彼らから逃げた。

では虹村が残っていればなにか変わったのか?

それは虹村には分からなかった。

ただ当日は彼らを見たくなくて、向き合わなかった。
他の人間の様に彼らを腫れ物扱いする訳でもなく、虹村はただ無関心だった。

嫌いだったから。嫌だったからだ。

けれど当日あった彼らへの負の思いはもうなかった。
後に思えばあれ程毛嫌いするほどでもなかった。
あんなに懐いてくれていたのに申し訳ないなとも思った。
あの時自分もなにかできたんじゃないかと思った。
あの時ちゃんと自分があいつらに向き合えていたら、

けれど、それだってもう過ぎたことだ。

当日の自分は幼かったんだと、1年ほどしか経っていないのに思っていた。

全く馬鹿馬鹿しいと、そう適当に片付けていた。


***



「っ、は、あい、つらの、体力は、どうなって、んだよっ!!!」

あの後からずっと全速力で虹村は自転車を漕いでいる。

しかし、

しかしだ、

何故だか追いかけてくる後輩達との距離が広がらない。

いくら虹村が乗っている自転車が普通のママチャリだとしても、

いくら虹村が現在運動部に所属しておらず、体力が昔より落ちていたとしても、

いくら追いかけてくる後輩共が現役で運動部に所属しているとしても、

これはおかしいんじゃないか。

息が上がりじわりと汗が滲む。

久しぶりに長時間全速力で足を使ったせいか足が痛い。

限界が近い。

そろそろこの追いかけっこを終わらせなければ、

と虹村が思った時だった。

目の前の道がヘリによって塞がれた。

「.........は、え?へり??なんで?」

思わずぽかん、と虹村が惚けていると後ろから足音が近づいて来た。

はっとして振り返れば後輩3人が道を塞ぎながら迫って来ていた。

何なんだこいつら。

虹村は思う。

後ろから音がした。

どうやらヘリから誰か降りてきたようだった。

「お久しぶりですね。虹村さん。」

にこりと微笑むオッドアイに虹村は目眩を起こしそうだった。







赤司達があっという間に居なくなったあと、なんだなんだと集まって来た合同合宿のメンバーである洛山、陽泉、秀徳、桐皇、海常のメンツに火神達は質問攻めを受けた。

火神に関しては完全に巻き込まれた状態である。

と言うより火神も何がたんなかわからない。

「黒子、結局あれって何だったんだ?」

火神が真横でミスディレしていた黒子に問いかけた。

お陰で皆黒子に気付き黒子をみた。

その刹那ちっ、と黒子が火神に舌打ちしたような気もするが火神は気にしないようにした。

「虹村さんがいたんです。」

「虹村って...征ちゃんが主将になる前の主将の虹村修造?」

黒子の応えにいち早く実渕が答えると周りがざわついた。

「虹村かぁ、懐かしいなぁ」

「そういや最近見かけねぇな?」

「確かバスケ辞めたんだろ?」

「ええっ、あんなに強かったのに?なんで?」

口々に虹村について話し出すメンバーに火神が首を傾げる。

「で、なんでその虹村?ってやつをあいつら追っかけに行ったんだ?」

その火神の問いかけに周りが確かにとまた黒子を見た。

「そんなの、僕らの前から虹村さんが二度といなくならない様に捕まえる為に決まってるじゃないですか。」

そんな視線の中黒子はなんでもないようにしれっとそう答えたのだった。



*偶然と言う名の


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キセキ虹が好き、でも書いたことが有りませんでした。

ので熱の力に任せて書いてみました結果がこれですよね、(´・ω・`)
ぷっつんぷっつん切れて読みにくい事この上なくてスミマセン_(。_。)_

友人に見せたところこれはシリアスギャグと評価してもらいました。実際のことろただのカオスギャクな気もしますね(汗)

虹村先輩好き好き過ぎて若干病んでるキセキも好きです可愛いキセキも好きです。


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