瓦礫の間を縫うように進む。俺がたまらず何度も振り返るのを咎める奴はいなかった。目的地の古い塹壕まではもう少しだ。心に生まれたゆとりはその分だけの悲しみに変わる。仲間をひとり、置いてきてしまったのだ。初めてのことではない。しかし、彼がそれを拒んでいる、それ以外にやむを得ないと言い切れる理由もなかった。無理矢理にでも連れていけば良かったのだ。それを、後悔していた。すごく。「パピヨン」見下げればヘッジホッグが服のすそを掴んでこちらを見ていた。あの捻くれもののチビが、随分とまぁしおらしくなったものだ。「行こうか」囁けば強く頷く。俺達はここで立ち止まるわけにはいかないのだ。水分の伴わない風が頬を撫でて去っていく。彼ならきっと生き残るだろう。ほんの小さな希望に縋って俺はまた歩を進めた。あれは無愛想だが出来た人間なのだ。頭も良い。ナイフの扱いにも長けている。何より、人をあやめることを躊躇しない。「もうすぐだ」先頭のクロウが言った。もうすぐ、また落ち着ける寝床が手に入る。しかしそこにあの姿はないのだろうと思うと、かれてしまって出るはずもない涙が頬を伝ったような気分になった。
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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