しのびよる夕暮れは刻々と俺を追い詰めた。砂煙ばかりが舞う頭上を太陽が横切っても南のこどもは目覚めなかった。それを見てひとりは「もう諦めろ」と言ったし、ひとりは「まだ時間はある」と言ったし、ひとりは「そいつは俺が見ているから」なんて言った。皆俺のためを思って口を開いていることはわかっている。しかし、誰もがこの子供の目覚めを待っていたわけではなかった。ひとり仲間が増えるということは、ひとり守らなければいけない対象が増えるということだ。食糧の取り分も減るだろう。移動の際だって手間がかかるようになる。兵と間違われて撃たれた仲間は今まで何人もいた。心ないおとなに連れていかれた仲間だっている。皆自分の身を守るだけで手一杯だが、しかし自分ひとりの力だけでは生きていけないのが俺達孤児の現状だった。だからこうしてグループをつくり行動しているのだ。しかし、大きすぎるグループは先述のとおり危険も伴う。同じ境遇にある同じこどもを救いたいという気持ちはあれど、やはり一番かわいらしいのは自分なのだ。ひやりとした頬はやわらかな弾力をもって俺のゆびを受け入れた。ここももうすぐ戦場になるだろう。自分の足で歩けない者は置いていくのが俺達のルールだった。この頬が血に染まるか否か、俺にはどうしようもない出来事だったのだ。一度決めたルールは絶対だった。しかし、夕暮れになっても南のこどもの瞼が上がることはなかった。
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