閑散とした廃墟の一室に数人のこどもがたむろしていた。とくに何をするでもなくただ身を寄せ合う俺達は所謂戦争孤児だった。北と南を分断する内戦は沢山のこどもから両親を奪っていった。遺された孤児たちは、こうして隠れるようにしか生きていけない。俺達のグループは増えたり減ったりを繰り返し今は14人だったが、皆北の人間だった。南のこどもが加わっていたことは、今までたった一度もない。「コヨーテ、そいつは」皆が見つめるなか南の子供を下ろせば、リーダー格のクロウが口を開いた。元は北の兵として戦場に出ていた男で、この中で一番いくさ慣れしている。ねぐらの移動やその日の個人の役割分担などには、この男の助言が大いに影響していた。それくらいに頭も良い男だった。このこどもをどうするか、それを決めるのもきっとクロウになるだろう。俺はただ一言、「拾った」としか言えなかった。「怪我をしているのか」「どうする」「とくに傷は見当たらないが」「随分いい服を着ているな」わらわらと群れる仲間達を割って俺は南のこどものとなりに鎮座した。「触るな、静かにしろ」そう諌めれば皆口をつぐんで俺と、それからクロウを見た。「あまり怪我のひどい奴は仲間にできない」クロウは俺の目を見ずに言った。わかりきったことだった。「しかし、こいつに目立った外傷はない」そう返せばクロウは何も言わなかった。俺が誰かを運んできたのは初めてだったからかも知れない。しかしこいつが南のこどもだと知れば、一体なんと言うだろう。よぎった疑問を俺は忘れることにした。話さなければいい、ただそれだけのことだ。その日、一向に目覚めないこどもの隣で俺は一夜を明かした。明日の夕暮れとともに俺達はこの場所を移動する。期限はそれまでだった。
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テーマ「人外ファンタジー」
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