「僕には君が理解出来ない」
「そうだね」
どうやら僕たちは同じようでも真逆の場所にいたようだった。彼も僕も綺麗なものが好きだった(綺麗に含まれるものの範囲の広さは著しく違ったが)けれども、彼はそれをただ眺めるのが好きだったらしい。ファイリングするというのはそういうことだ。あるものを、あるがままに、あるがままの姿で。状態を保つために最低限の手だけを加えて、あとはそれをただ眺めるだけなのだ。しかし僕は違う、僕は集めるだけでは気が済まない。綺麗なものをこの手でさらに昇華させることが僕が僕自身に与えた最高の役目であり喜びだった。あるがままでは駄目なのだ。しかしそれは僕にとっては昇華でも、彼にとっては破壊でしかない。
「僕達はどうやらきちんと真逆なようだ」
「そうだね、でも」
芙愛は僕が作り上げた小さな折り鶴を手に笑った。そうして僕はぼんやりと、綺麗なひとをさらに美しく昇華させるのは、やはり綺麗なものなんだと感心し、そして僕の愛するそれらを引き立て役に変えてしまう彼にほんのすこしだけ嫉妬した。
「松下のその手と、君の折った鶴なら是非ファイルしたいと思ったよ」
どうやら僕たちは、真逆ながらごく近い場所にいるようだった。

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