愛だとか友情だとか、そうゆう生温いものとは元来無関係だ。温かい、やわらかな鉄臭いそれには吐き気しか感じない。ひやりと冷たくて、ちくり刺すようなそれなら、常に鼻の奥にこびりついたようににおっていたし、いつしか愛着もわいてしまった。そこいらの無知な人間は、こういう奴を気違いと呼ぶんだろう。その点で言えばここはさながら精神病院か、愉快なことに頭、ついでに身体能力もブットんでる奴しかいない。こんな場所でそんな生温いことが言える奴なんて、死にたがりの馬鹿か、それこそ末期の気違いぐらいだろう。

俺は今日もそれなりに普通の気違いとして、ろくに姿を見たこともないボスの為に働いている。正直楽しいのかと聞かれれば楽しくはないが、しかし逃げたいかと聞かれれば逃げたいわけでもない。何故って逃げたら殺されるからだとか、そういう理由なんかではなく、そう、あえて言うなら、俺も普通なりに立派な気違いだからだ。愛だとか友情だとか、そういう生温いものはここには無い。無いがしかし、それとは別の、やけに冷めた仲間意識みたいなものは確かにあるんだ、よくは解らないし解りたくもないが。俺は俺なりにこの馬鹿みたいな場所を気に入っていた。

そう思えるってことは、もう俺も立派に末期な気違いなのだろうか。しかしまぁ、それも悪くはないだろう。俺が末期の気違いなら、同僚もみんな末期の気違いだ。ほら、愛や友情は感じなくても、仲間意識くらいは湧いてくるだろう?この組織の中で、俺はいたって正常なのだ。

「なんてね、」
言って鼻で笑ってやった。実に、下らねぇ。



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テーマ「人外ファンタジー」
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