ぱたぱたぱたと軽い音をたてて白を汚したのは焼けるような色だった。それと同じ色の瞳を飾られた床に滑らせて彼は言った。
「わからないんです」
冷めた息を吐き出す唇は不思議と青く見えた。柔らかさを失った肢体はぎこちなく動く。しかし彼は不思議と花のように笑うようになった。彼の笑顔ばかりを見ていると、何がよくて何が悪いのか、すべてがまぜられこねられ跡形もなくわからなくなる。
「ねぇスコーピオ、わたしは生きているんでしょうか」
抱きしめたからだはひどく温かかったがしかし、きっと彼はもう死にかけていた。それならばおれももうすぐ死体になるのだろう。
「お前が死んでいると言うのなら、わたしはそれで良いんです。お前の腕の中で死ねたのなら、わたしはそれで良いんです」
呪文のように遺言のように呟いて彼は静かに泣いた。痛みに歯を食いしばり眉間にしわを寄せ必死に涙を堪えた日々はもはや遠すぎるくらいに遠い。まっさらなしずくは確かに痛みをさらって流れていく。彼がとうとうやわらかな笑顔ばかりになったとき、そのときおれ達は死ぬのだろう。

やわらかなしたい
(スコーピオとヘッジ)



改造の結果だんだん痛覚が鈍っていくヘッジとか萌えるじゃねーの…たぎるじゃねーの…という呟きに賛同してくれた方がいらっしゃってなんやかんやで同じネタで作文してみようというちょっとしたチャレンジしてみました。というわけで素敵な作品さまはこちら。痛覚トんでるヘッジカワイイよヘッジ。
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