タイトル込みで140字。キャラのイメージがあったりなかったり


「この堅物め」と呆れるような音が転がった。「お前には言われたくないな」と別の音が返した。彼は知っているのだ。飄々としたその表面に隠されて、その中に揺らぐことのない別の何かがあることを。「うつけを演じるのは楽しいか?」「ああ、楽しいよ」跳ねた笑い声はもう帰らない。(憐れと笑う唇は)


朝食の席にて。「妊娠したんだ」と言って薄い腹を撫でる手は確かに男のものだった。眩暈がする。彼は悪い夢を見ているのだ。認めたくはないがきっと、いや確実に彼はその夢の産物を俺の子だと言うだろう。落ち着こうと割った卵には黄身が入っていなかった。ほら見ろ。(彼の子宮、或いは黄身の無い卵)


冷めた瞳がゆうらら揺れる火を見つめている。私の一声でどうにも動くその身体はひどく冷たい。彼が人間なのか、それともその抜け殻なのか、私ははかりかねていた。「手を」「その手を火の中に入れなさい」。彼は何の躊躇もなく赤い火の中に手を突っ込んだ。やはり彼はもう抜け殻だったらしい。(死体)


「愛していたんです」。本当です、とさめざめさめざめ泣き続けるその人の、細い指に薄い唇を寄せる人間はもういない。長い睫毛から落ちるしずくをそっと拾う人間も、震える肩を優しく抱く人間も、愛おしげにその名前を呼ぶ人間も、もはやただただ不規則に床を転がるのみなのだ。(望むべからず未亡人)


気味の悪い奴だ。彼の不思議な色した瞳を見ると、背筋に何か嫌なものが走るのである。赤過ぎるぐらいに赤い髪も、白過ぎるぐらいに白い肌も、全てが全て気持ちが悪い。俺を呼び止め笑う彼にその旨を伝えれば、「そうかな?有難う、嬉しいよ」と言って笑った。吐き気がする。(彼女が食べた彼が吐いた)
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