14、15歳くらい


馬鹿馬鹿しいと吐き出した空気がひどく冷めた空間を漂った。やわらかな午後の日差しがカーテンの隙間から薄ら暗い室内を照らしている。シーツの波間に浮いた脚はひどく細い。
「わたしは何も知りたくなかった」
それは些細な意地のようなものであったがしかし、彼はそれを何よりも重んじていた。スコーピオは彼のその性格を知ってはいるが理解してはいない。
「どうせいつかはこうなるはずだった」
「ちがう」
繰り返すやり取りは何の生産性もないがもうかれこれ数時間は続いている。それにスコーピオはうんざりしているが、ここで自分が折れるわけにはいかないのだ。
「好きなんだ」
「…わたしは」
「愛してる」
「それでも、こんなの望んじゃいなかった」
ぐずる子供をあやしている気分だった、いつかの自分達を相手にしているような。彼はいまだあの頃のままなのだ。自分よりいくらも背伸びしていた小さな彼は、背伸びし過ぎてとうとう大人になれなかったらしい。いや、それとも彼はあの頃からかわらず大人のままなのか。よく知る彼がいつまでもよく知る彼であることを、スコーピオは嬉しいが悲しく、そうしてほんの少しだけ煩わしくも思っていた。
「お前はかわってない」
「ええ、」
「もう俺達はこどもじゃないんだ」
「…こどもですよ、まだ」
ゆるく曲線をえがいていたシーツにしわが寄る。その中で身を丸める彼はまるでぬるい腹の中で夢を見続ける胎児のようだとスコーピオは思った。
「わたしたちはまだ小さくて幼くて弱い」
「ヘッジホッグ、」
呼ばれた名前に極彩色の瞳がじろりとスコーピオを見た。静かな色彩ばかりの彼の中で、その映える瞳の色がスコーピオは好きだった。
「お前はいつからそう背伸びばかりするようになったのでしょう?わたしの知るスコーピオはとうとう昨日死んでしまった」
そう言った彼のこぼしたしずくはひどく鮮やかに見えたがしかし、きっと自分が手をのばしたところでその色は死んでしまうのだろう、とスコーピオは理解していた。いつからこうなってしまったのか、そんなの逆に聞きたいくらいだと呟く吐息は声にならずに死んでいく。子供なのはどちらかなんて、明白過ぎるくらいに明白だった。


少年トルソ、或いは極彩死

(スコーピオとヘッジ)



お持ち帰り用
ご希望にそえた気がしませんが大丈夫でしょうか…!ウッカリ成長にしてしまいました趣味ですヒィすいません…スコーピオもヘッジも年齢が不詳すぎて…あの姿よりも成長しているものと考えて見ていただけると嬉しいです。それではリクエスト本当に有難うございました!
/ひふみ
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