死んでしまうと思った。そうだ、死んでしまう。ばかみたいに痛い腹を抱えて私は立ち上がった。ずるずると腰をさまよった布団はそのあとすぐに床に落ちる。さいあく。コンセントから延びた黒いコードの先にころがるビビッドピンクを力まかせにひっぱれば、かたい音がして充電器が床に落ちた。ごつん。なんだか腹がたったので蹴飛ばしたら、裸足の指にそれは硬すぎたらしい。むかつく。死ね。ぼさぼさの髪を掻きむしりながら携帯を開く。着信が三件。あら私愛されてる。発信すればコールが四回、聞き慣れた声が出た。
『おい小鳥遊お前、昨日あンだけ俺にDVD持ってこいとか言っといてサボりかよ』
「違うわよ馬鹿、生理薬とスポーツウォーター」
『何?』
「生理薬とスポーツウォーター買ってきてって言ってンの、三十分以内」
『あァ!?俺今めっちゃ授業中なんだけど、』
「授業中に電話に出てる時点でアンタの評価なんて最悪だから、いいから早くしなさいよハゲ」
『いやいやいやいや、小鳥遊ちゃん?まず俺禿げてねーし、』
「うるさいハゲ死ね、」
『………』
「…あと、DVDも」
『…はいはい、ッたくよォ、』
「私が死んだらアンタのせいだから」
『はァ!?』
「早くしてよ、それじゃ」
通話を一方的に切ると、なんだか愉快な気分になった。薬局で生理薬を買う男子中学生だなんて笑い者以外のなんでもない。良い気晴らしだ、ざまぁみろ。一度は床に落とされた布団を抱えてベッドに戻る。三十分後、顔を真っ赤にさせて怒鳴りながら乱暴に戸を開ける救世主の顔なんて想像しながら、私はもう一度眠ることにした。

(不動と小鳥遊)
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