風丸←宮坂前提


彼の世界はずいぶんせまいようだった。それが愛おしいと思う俺は、きっとひどい男なのだろう。なにかいけないことをしたわけでもないのに込み上げてくる謝罪の念は、無知で一直線で愛らしい彼に捧げるものだ。たとえば彼が俺と出会わなければその世界はもっとずっと広がっていただろう。それくらい彼は俺のことを盲目的に愛してくれるし、俺も彼のことを愛していた。愛しているけれど、俺の視界は彼だけで埋もれてしまうほどせまくはなかった。それがひどく申し訳ない。彼は、なにも知らないのだ。俺だけで成り立ったその世界が、ひどくさみしい場所であることにさえ、いつまでたっても気付かない。でもそれが良い、それが良いんだよ。可哀相な宮坂、そんな彼を愛する俺は、やっぱりひどい男だった。

(風丸)
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -