みちばたでからすが死んでいた。羽をひろげてひれふすようにその場を黒くよごしていた(と言っても、血はいっさい出ていない)。そばでべつのからすが一羽、せわしなくぴこぴこ跳ねている。ひとが通っても車が通っても離れずにただ仲間の死骸をその真っ黒な瞳でみつめていた。可哀相に、と思ったのはうそではない。だけれどそれよりも先に、俺はその死んだからすが羨ましかった。死んでもなお仲間にしたわれるそいつが、羨ましかった。生き物の価値っていうのは、死後になってからわかるらしい。つまり、結婚式で何人の人間に祝福されるかではなく、葬式で何人の人間がかなしみ涙を流してくれるか、ということ。このからすにもどうやら一羽の仲間に死後もなお思われる価値があったようだ。羨ましい。しかし俺が死んだらだれか泣いてくれるだろうか。思い当たるかおなんてひとつもなかった。ため息をひとつ、見上げれば、ぐわんぐわんに歪んだ雲が黒くうずまきはじめていた。もうすぐ雨がふる。このからすは、雨がふってもなおこの場で仲間の死を悼みつづけるのだろうか。しかしそんなことはどうでもよかった。俺は彼らのように真っ黒い折りたたみ傘を鞄から取り出してひろげると、地面を飾りはじめた透明なつぶを見つめながら家路を急ぐことにした。

からす
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