※数年後で二人がサッカーしてない。


俺はお前が嫌いでお前は俺が嫌いでそれだけで成り立った世界はあんまりに真っ白だった。ごうごうと燃える炎とぎらぎらと凍てつく氷が競い合うこともこの世界では微塵もないのだ。ただのばした腕が触れるのは冷たすぎずも温かすぎずもなく素晴らしく常温である体温であり、なんだかそれだけは悪くないと思った。だがしかし俺はお前が嫌いなんだよ、風介。
「寄るな晴矢暑苦しい」
「うるせェお前がそこにいるのがわるい」
「動くな晴矢暑苦しい!」
「うるせェじゃあお前がどっか行けよ!」
白い壁紙に白い床、前述通りのまっさらな部屋で俺達は怒鳴りあった。何もないのは越してきたばかりだからだ。明日になればさびれた色したいかつい箱がこの部屋を埋め尽くしているんだろう。
「どこか行けだと?1DKだから無理だ」
「…その通りだな」
だだっ広かったお日さま園とは違うこの小さな空間で、俺達はそれぞれ何をするでもなくただ床に転がっていた。まるで冷凍まぐろにでもなったような。
「凍てつくまぐろの闇…」
「…なに?」
「なんでもねーよ」
「なんでもなくはないだろう」
「ただの独り言だよ!」
「気になるだろう!」
「勝手に気になってろ!」
そうしてまたも怒鳴りあいなんかをして、ああ何故にして俺は今この瞬間にこいつと二人でいるのだろうかなんて疑問に思ったりする。それはこれから毎日のように、いずれはきっと習慣化していく疑問なんだろう。最終的には疑問にすら思わなくなるのかもしれない。
「…俺はお前が嫌いだって言ったんだ」
「なんだと?」
「だから、」
「私だってお前なんか大嫌いだ」
「そうかよ」
「…でもまぁ、悪くはない」
「…そうかよ」
大嫌いだというのも嘘ではないが、呟いた言葉にも嘘はなかった。だから俺達はこうして二人で、二人揃って、沢山の思い出で染まったお日さま園を卒業して、まっさらなところから新しい生活を始めるのだ。必死になってごうごうと燃やした炎もぎらぎらと凍てつかせた氷もなにもかもをあそこに置いて、俺達はまた歩き出すのだ。
「ところで、さっきの」
「あ?」
「まぐろだったか?食べたいのかは知らんが、そんな金はないぞ」
「き…聞こえてたんじゃねーか!」



どっちもサッカーしてないとか書いたけど個人的な理想は涼野はプロでサッカーを続けていて南雲はサッカーをかじりつつ主夫。もちろん涼野の。
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