「ナンセンスだ」
彼はずいぶんとしょげ返ったさまでいった。いつもの生き生きとしたキ×ガイっぷりが嘘みたいである。どうしたんだい、なんて声をかけるほど俺は彼と親しくなった覚えはないが、しかし彼は俺がどうするべきか答えを出す前にその口を開いた。聞いてもいない話をペラペラと喋り出すところはいつもとかわらないようだった。
「世界は灰色をしている。俺はそれが悲しい。でも誰も気付いちゃいない、みんなぼんやり鈍った感覚でものをみているんだ。色彩にあふれた世界はとうになくなってしまったというのに」
彼はどんなに落ち込んだ状態であっても素晴らしくキ×ガイだった。派手な紫色に染まった髪の毛をしゃらしゃら揺らして、ぼんやりとしかし冷たい視線でどこか遠くをみている。世界中の人類が鈍った感覚でものをみているというのなら、彼はきっと世界中の誰よりも鋭い感覚でものをみているのだろう。しかしそれこそ彼がキ×ガイたる所以であり彼が誰にも理解されない理由だ。先端恐怖症の人類は、鋭利なものを好まないのだ。まあるくまあるく優しくされたものばかり溢れたこの世界で、彼だけがそれを拒んでいる。そのさまはひどく滑稽だった。
「可哀相に」
「可哀相なのは人類だ」
「そうかな。知らなければ悲しいことはなにもないんだ、知ってるのは君だけだよ」
「俺は別に悲しくなんてない」
ただ哀れに思っているだけだ、と彼は呟いたがしかし、それならばその瞳から落ちる極彩色のしずくはいったい何なんだい。そんな質問を飲み込んで、俺は彼のいう鈍った視界で世界を見た。目に入る全てがまあるく優しいこの世界で、ひどく痛々しい何かを求める彼はこれまでも、そしてこれからも一生誰にも理解されないのだろう。ちくりとささる針はやはり誰しも痛いのだ。そんな世界を彼が哀れむのならせめて、そんな彼を俺だけは哀れんでやろうと思う。お前が産まれるべき時代はまだきていなかったんだ。ほんのあともう少し、76億年くらい先だったならば調度良かったのだろうにね。



変わり者集団のローズグリフォンの中でもジャンは頭ひとつ飛び抜けた変わり者だってことを書きたかったのにどうしてこうなった
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