○上木鷹山

制服のスカートから見える素足は、今の時期は目に毒だと思う。

「さぶっ!」
「そりゃそんな格好してるんだから、寒くて当然だよ」
「仕方ないじゃんー制服なんだからー」

僕の隣を歩く彼女は、下にジャージ履いたりするの嫌いなの と風で乱れた前髪を整えながら呟いた。

「まあ…それもそうか。 てゆうか、なんでマフラーしてないの死ぬでしょ流石に」
「朝ドタバタしてて忘れちゃった。 通りで首元さっむいなーと思った」
「…ううっ、見てるこっちが寒い…」
「よーざん暖かそうなマフラーしてんじゃん貸してよー」
「やめて引っ張らないで」

僕のしてるマフラーを遠慮なしにグイグイ引っ張ってくる。苦しい。
ちょ、なんでこんな手加減なしなの

「くるしいくるしいくるしい」
「よぉーざん!!」
「しぬからしぬから」
「かーしーてーよー」
「…っ!」

ぱっと離されて態勢が前のめりになる。
つまんないのー とふて腐れられても、そうしたいのは僕の方だ。

「あーあ、伸びちゃった」
「あー」
「あーじゃないでしょ。 僕窒息死するところだったし」
「ごめんごめん。 だってさっむいんだもん!」
「…はあ」

人生に疲れ果てたかのようになってしまったマフラーを外す。
きゃっきゃと騒ぐ彼女にふわりと掛けてあげた。

「えーくれんの!?」
「あげるなんて言ってない、貸すだけ。 明日ちゃんと返してよ」
「はぁーい。 ようざんありがとー!いいにおいー!」
「におい嗅がなくて良いから!」
「ようざん顔真っ赤っかー!!!」


***
単に鷹山のマフラーを引っ張りたかっただけです。

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