○不破豹
ぴょいぴょい。
「ひょう邪魔しないで」
ぴょいぴょい、ぴょん。
「器用さね〜」
「簡単だよ」
俺には無理だあ、と彼は私の編み込まれた髪の毛をなぞった。
「魚の骨みたいダニ」
「フィッシュボーンって云うのよ」
編み終わった右側のフィッシュボーンを豹がまじまじと眺めていて、私にはそれが餌を取ろうとしている猫に見えてしまって鏡ごしに笑った
「いくら猫でも、骨は食べれないでしょ?」
「俺いちおー人間だしね……ってあれ、この下り前にもなかったっけ?」
「…よし終わった!」
「あれ無視?」
フィッシュボーンと、毛先に結ばれたピンクのシュシュ。時間をかけて丁寧にやったから、いつもより見栄えもいい
「かわいー!絶対かわいー!」
「ほんと?ありがとう」
「ね、ね!俺にもやって!」
「え!無理だよ無理!豹の髪みじかいもん」
「ぶーぶー」
「それに女の子みたいになっちゃうよ?」
「だって……」
「だって?」
「…だって魚の骨おもしろいんだもん」
「なんじゃそりゃ?」
フィッシュボーンに興味を持ったのか。それにしても自分にやってくれ、なんつって編み込んでもらうタイプじゃないしな
「習得したいんだべや」
「してどうすんの?」
「よーざんの髪にフィッシュボーンする」
「うん完全に怒られるね、その前に嫌がられるね」
「したいしたいー」
「……」
「したいしたいー」
折れたのは私だ。
「だから、ちがう!こっち!」
「ん?あれ、これ何で…」
「そこ一緒に持ったら混ざっちゃうよ!」
「やべー!グチャッた!!」
「はい最初から!」
「ぐえ…やっぱやめるべ」
だから最初から言ったじゃないか、とは言えなかった。
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