○不破豹

家に帰ったら何故か豹がいた。スースーと可愛らしい寝息をたてている彼は、私の愛猫のタマを抱き枕にして眠りこけていた。なんだか微笑ましい光景だが、当のタマは至極迷惑そうな顔で静かに豹に抱かれている

「ニャー」
「ただいま、タマちゃん」

私の帰りを出迎えるタマは世間の猫よりも少し人懐っこいようで、根気強く教えたらお手やおかわりも出来るようになったのだ。まったく、可愛らしい子だ。タマが退いたため腕の中にいた温もりがなくなった豹はうっすらと目を開け「あれ?帰ってたんだ?」と眠そうな顔をする

「ただいま」
「おかえんなさい」
「いたの?」
「こっそりお邪魔したべや」

たいして興味もなくふーん、と適当な返しをすると豹に腕をひかれた。一緒に寝ようと思ってずっと待っていたらしいが、あまりにも私の帰りが遅いため代わりにタマと睡眠を共にしたそうだ

「やっぱりタマじゃ物足りなかったべや」
「当たり前でしょ、猫なんだから」
「こっちきて」

布団の中で豹に包まれる。ずっとそこに寝ていた為か、微妙に熱を持っている布団が眠気を誘った。うとうと、あぁ寝そう…と意識が落ちかけたところでタマちゃんが私たちの間を割って入ってきた

「ん〜タマちゃん、邪魔しないでくれや」
「そんなこと言わないで」
「だってタマがいるせいでくっつけないべ」
「私からすりゃ、猫も豹も一緒よ」

豹がすっとんきょうな顔をした直後、お腹あたりから「ミャウ」みたいな声が聞こえた



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