久しぶりに友達と語り明かそうじゃないか、と入店した居酒屋。

「しゃいませえ!!お客さま二名様っすねえ!」

活気のある声が私たちを出迎えた。

飲み物を頼み、数分は楽しく会話していたのだが、次第に向かいに座る彼女の目がトロンとしてきてしまった。「飲み過ぎた…」ふらふらとトイレへ歩いていき、心配しながらも「気をつけて」とだけ声を掛け、自分は目の前のグラスを傾けた。


「はあ」

わいわい賑やかな店内に一人、意外と寂しいものだ。

「おかわり飲みますか?」
「え、あ、はい。 同じのを」

空いたグラスをテーブルに置いたのと、店員が私の席の真横を通ったタイミングが合い、親切にも声をかけてもらい注文をする。

すぐさま同じものが運ばれ、もう片方の手にはお摘みと思われる料理が持たれていて、きっと違うテーブルの注文だろうと思っていたら「どうぞ」と私の目の前に音を立てず置かれた。


「あの、これ頼んでないです」
「サービスですんで、食って下さい」
「…でも他のテーブルには、」
「あ、俺からなんで。 店長には秘密っすよ」
「…ありがとうございます、本当にいいんですか?」
「遠慮しないでいいっすよ」
「じゃあ、いただきます」


はい!と元気良さそうにされた返事に釣られて私も微笑んだ。


「じゃあ仕事戻りますんで、」
「あ、あの!」
「?」
「な、なんで私にだけ…」
「……あ〜いや、なんつーか、会話できたらいいなー…なんて思ったんすよ……」
「………」
「なんか、スイマセン!じゃっ!」
「あっ……」

行ってしまった。
のちに彼とすれ違うように友達がトイレから帰還した。

「知り合い?」
「ううん、今初めてしゃべった」
「なんかあの人顔真っ赤だったよ?」
「そ、そう…?」


戻る