072 (21/21)
「何をそんなに騒いでいたの?」
部屋から場所変わって、一階のリビングにて。
私と、豹と、お母さん。
私の部屋でしばらく豹と言い合いになっていたら、お母さんが上がってきてひとまずは休戦になった。
お母さんは私が持っているケチャップスクリームと、豹の顔を見て微笑んだ。
「二人とも一階に降りておいで」そう言ってお母さんはリビングに戻って行ったので、私と豹も同じくリビングへと移動。
そして今に至ります。
「……」
「……」
「二人とも急に黙っちゃってー。 どうしたの?」
そもそも何が原因で喧嘩になったのか、あまり覚えてない。
すっごく下らないことだったかもしれない。
お母さんは、うるさくしていた私たちを怒るでも呆れるでもなく、優しく聞いてくれている。
「…なんだったっけ?」
「あらヤダ、覚えてないの?」
お母さんが含み笑いをした。
私は隣に立っている豹に聞いた。
「豹、覚えてる?」
「……フン!」
「ええっ、まだ怒ってるの?」
ぷいっ、とそっぽを向いてしまった豹の横顔は確かに不機嫌そうだ。
そんな豹を見てお母さんが考えついたように、手を叩いた。
「ヒョウ!」
「な、なんだべや…」
豹が構えた。
「あなた、まーたナマエちゃんにヤキモチ妬いてー!」
「やきもち?」
「ち、ちがうべやっっ!」
「お母さんの目は誤魔化せないわよー!正直に言いなさい。そうしないと、ナマエちゃんに嫌われちゃうわよ?いいの?」
「…!!!」
豹の顔が青ざめた、ように見える。
「ナマエ、スクリーム返して…」
「あ、はい」
受け取ったスクリームを高速で被った豹は、私の方を見て一言。
「べ、別に?ナマエにヤキモチなんか妬いてないべさ〜?」
「あらそう、じゃあナマエちゃん。お正月もハセガワくんと、」
「それはダメ!!!」
「じゃあちゃんとナマエちゃんに言いなさい」
「……」
ぷしゅん、空気が抜けたみたいに豹が意気消沈した。
お母さんと豹を交互に見るけど、どちらとも視線が合うことはない。
「…ナマエ」
「は、はい」
「あんさ、正月は俺と初詣行こう」
「…!うん!」
それを聞いてお母さんが「一件落着〜♪ 」なんて言いながらキッチンに移動した。
今日の夕飯は豪華だそうだ。
13.01.07