いつだって私はあなたの足手まといで、何の役にも立たない。他の候補生達は幾つもの任務をきちんとこなしているのに。
ほら、今日だって悪魔が目の前にいるのに動けないでいる私。1人じゃ何もできない。だからいつも誰かが助けに来てくれる。










「椎名さん…このままでは祓魔師にはなれませんよ。悪魔にきちんと立ち向かってください。いつも助けには行けませんから…。」

「…はい。すみませんでした。」


結局、悪魔に油断していた私は足と腹部を怪我した。今は奥村先生に担がれ医務室に治療に来ている。致命傷は免れたものの出血が酷かったみたいで、少し頭がクラクラする。腕には点滴が何本か繋がっていて、今さらだけど自分の怪我の酷さがわかった。


「1ヶ月ほど安静にしていてください。授業は進んでしまいますが、プリントなどを持ってきますね。」

「………はい。」


1ヶ月……。
長いこの期間は神様が与えた私への試練なのか。いや、試練ではない。罰……だ。
奥村先生が出ていった後の医務室は嫌になるほどしん、と静まりかえっていた。音が聞こえるとしたら、私の吐息だけ。


「…………くやしい。」


つい本音が出てしまった。
本音の次には涙だ。私は耐えきれず、たくさん涙を流した。誰もいないが腕で顔を隠す。


「…ぅっ…っぐす…ひっく…」


止まることを知らないのか、涙は私の意思を無視して流れ続ける。我慢しようとしたが、それすらもむりだった。
すると、ガラッと音を立てて医務室の扉が開いた。私はハッとして流れていた涙を乱暴に腕で拭いた。
医務室に来た人物は入り口からゆっくりと、私が横たわるベッドまで歩いてきた。私の真横で足音が止まった。その人物は何も喋らず、じっと私を見ている…感じがした。


「…おまえ……泣いてんの…」

「……!!」


聞こえた声は奥村くんだった。
彼の顔は見えないが、声色から推測すると悲しそうな顔をしているのだろう…。


「……な……で?」

「……なに?」

「…なん…で…私なんかを…心配…しているの?……なんでよっ!!」

「……っ!!」

「…た、ただの…足手まといで…皆みたいに…っ戦え…ないっのに…」


また、だ。本音が次々と出てきた。こんなの奥村くんに言ったって仕方がない。それに彼に迷惑だ。
私は自分の事しか考えていなくて、


「…………しちゃ悪いかよ」
「……え」

「好きなやつの事、心配しちゃ悪いかよっ!!!!」

「……へっ!?」

「俺はっ…おまえが心配だから来たんだ!!」

「………うんっ」

「……足手まといとか…皆、思っちゃいねぇよ。」

「……う…んっ」

「…おまえは…雪は皆の役に立ってるから……」

「………っ…」


彼の1つ1つの言葉が胸に染みて、止まったと思っていた涙がまた流れ出した。泣き顔が見られたくなくて腕で隠す。


「………奥村…くん…」

「燐でいいって。」

「………燐くん。」

「……ん、」

「ありがとう」






俺がお前を守ってやる
(さぁ、椎名さん授業しますよ)
(お、鬼教師から早く逃れたい)
(只でさえ兄さんで手一杯なのにっ)
(ぶえっくし)
(なんや、奥村くん大丈夫ですか?)




20110611



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