(ウォーゲームの後)





世界を揺るがす危機でも、過ぎてしまえば力も抜けるもので。



「ずるいです、太一さん」
「え?何がだよ」


散らかしたパソコン機器を片付けながら、光子郎は少しむくれてみせた。


「会えたんでしょう?ウォーグレイモンに」
「あぁ…そうだな」


どういう力が働いたのか分からないけれど、太一はヤマトと一緒にパソコンの中に入ることができた。
ほんの少しの間、しかも戦いの最中だったけれど、久しぶりに相棒に会うことができたのだ。


「お前もテントモンと話せただろ」
「直接は会えませんでした」
「……」


片付ける手を止めて、ふと太一は自分の手のひらを見つめた。
あの瞬間、確かにウォーグレイモンに触れたのだ。
データの世界だとしても、触れた感触は確かに残っている。


「僕も、テントモンに会いたかったのに…」
「…は、話せただけ良かったじゃねーか!」


なんて。
ぼやく光子郎をなだめながら、パソコンをぐっと持ち上げ机に戻す。
つい数十分前までは、この画面に相棒がいたのだ。


(実感わかないんだけどなぁ)


世界の危機も。
相棒と再会したことも。
全てがあっという間過ぎて。


(でもさ)


もう一度、手のひらを見て、笑みがこぼれた。
あの手の感触だけは、間違いなくここにある。


「また会えるさ。きっと」












ちなみに、島根では。


「お兄ちゃん、メタルガルルモンに会えたんでしょ?」
「……う、うん」


涙をいっぱい溜めた瞳に、ぎぎぎ、と顔を背ける。
タケルの泣いた顔は見過ごせない、けれど、こればかりは仕方が無い。


「僕もパタモンに会いたかったよ!」
「そ、そうだな」
「パタモン、怪我してたかもしれないのに…」


お兄ちゃんだけずるいよ、と。
タケルには申し訳ないけれど、ヤマト自身も直接会えるだなんて思っていなかったから。
夢か現が分からないような、あまりに短い再会だったけれど。


(触れられたんだよな、確かに)


なだめるように髪を撫でる手のひらに、相棒に触れた感触が甦って。
少しばかり口元が緩んでしまうのは、許してほしい。


「また会えるさ」
「…うん」






***

参戦できなかった組は悔しがりそう。

2015.5.4
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