(ウォーゲームの後)
世界を揺るがす危機でも、過ぎてしまえば力も抜けるもので。
「ずるいです、太一さん」
「え?何がだよ」
散らかしたパソコン機器を片付けながら、光子郎は少しむくれてみせた。
「会えたんでしょう?ウォーグレイモンに」
「あぁ…そうだな」
どういう力が働いたのか分からないけれど、太一はヤマトと一緒にパソコンの中に入ることができた。
ほんの少しの間、しかも戦いの最中だったけれど、久しぶりに相棒に会うことができたのだ。
「お前もテントモンと話せただろ」
「直接は会えませんでした」
「……」
片付ける手を止めて、ふと太一は自分の手のひらを見つめた。
あの瞬間、確かにウォーグレイモンに触れたのだ。
データの世界だとしても、触れた感触は確かに残っている。
「僕も、テントモンに会いたかったのに…」
「…は、話せただけ良かったじゃねーか!」
なんて。
ぼやく光子郎をなだめながら、パソコンをぐっと持ち上げ机に戻す。
つい数十分前までは、この画面に相棒がいたのだ。
(実感わかないんだけどなぁ)
世界の危機も。
相棒と再会したことも。
全てがあっという間過ぎて。
(でもさ)
もう一度、手のひらを見て、笑みがこぼれた。
あの手の感触だけは、間違いなくここにある。
「また会えるさ。きっと」
*
ちなみに、島根では。
「お兄ちゃん、メタルガルルモンに会えたんでしょ?」
「……う、うん」
涙をいっぱい溜めた瞳に、ぎぎぎ、と顔を背ける。
タケルの泣いた顔は見過ごせない、けれど、こればかりは仕方が無い。
「僕もパタモンに会いたかったよ!」
「そ、そうだな」
「パタモン、怪我してたかもしれないのに…」
お兄ちゃんだけずるいよ、と。
タケルには申し訳ないけれど、ヤマト自身も直接会えるだなんて思っていなかったから。
夢か現が分からないような、あまりに短い再会だったけれど。
(触れられたんだよな、確かに)
なだめるように髪を撫でる手のひらに、相棒に触れた感触が甦って。
少しばかり口元が緩んでしまうのは、許してほしい。
「また会えるさ」
「…うん」
***
参戦できなかった組は悔しがりそう。
2015.5.4