「大丈夫?」
サブローが苦笑しながら冬樹の顔を覗きこんだ。
「顔、赤いよ」
「……」
その日、冬樹は熱を出して学校を休んでいた。
お見舞いにとやってきたサブローは、ベッドの隣にイスを置いて座っている。
「…なんで知ってるんですか?」
「夏美ちゃんに教えてもらってね」
サブローが制服姿なのは、きっと学校帰りに直接来てくれたから。
それが、無性に嬉しくて。
細い指先が冬樹の額にちょん、と触れた。
「冷たいですね…手」
「そうかな?」
(もっと触って欲しい)
熱でうかされた頭でそんなことを考えた。
「も、っと…」
「え?」
手を伸ばし、サブローの手を掴んで額に強く押し付けた。
密着したところから冷たさが伝わってくる。
カタンという音は、サブローが引かれるように立ち上がったからだろうか。
「冬樹くんの手、熱い」
「きもちいい…」
そっと目を開けると、くすりと微笑む彼の顔。
ひどく優しい笑顔だった。
「……」
(欲しい)
どうしてこんなに、と思ってしまうほどに。
「熱高そうだね…苦しくない?」
「はい…」
「眠っていいよ」
優しい言葉だけれど、まだ眠りたくない。
(欲しい、欲しい)
「……っと、」
「?」
「もっと…」
ただ。
(あなたが欲しい)
「どうしたの?気分悪い?」
「…サブローさん……」
「冬樹くん、」
心配そうに、サブローが冬樹の方に身を乗り出した。
同時に冬樹が重い腕を動かしたのに気づかない。
「大丈夫?ふゆ……んっ!?」
上から垂れる形になったサブローのネクタイを強く引っ張った。
ぐっと近づいたサブローに少し強引に口付ける。
ガタンっとイスが倒れる音がした。
「ふ、…っん、」
反射的に離れそうになる彼を引き止めるように、ネクタイを引っ張る手を緩めずに。
空いていたもう片方の手で、後頭部をぐっと押さえてしまえば、逃げ場はもうない。
熱い舌を伸ばして、夢中になって、彼を欲した。
「んん…っはぁ…」
長いそれからゆっくり離れると、一瞬伝った銀色の筋に、ぞくりとする。
サブローはくたりとその場に座り込んでしまった。
乱した呼吸と、自分と変わらないくらい赤に染まった頬が、たまらない、と思う。
(でも)
「ふふ…サブローさんすごくかわいい」
まだ満足できない。
もっと、もっと。
(あなたがほしい)
「…ねぇ、サブローさん」
あれだけ重かった体なのに、今では少しも気にならない。
ゆっくり起き上がって、座り込んだままのサブローのネクタイをもう一度引いた。
「ふゆ、」
「足りないです」
際限ない欲と浮かされた思考は、熱のせいなんだろうか。
「あなたをください」
***
魔幻龍様へ24500hit記念でした。
頂いたリクエストは『押せ押せな冬樹君で冬サブ』でした。
冬樹さんがめっちゃいきました。病んではないはずです。
2009,12,26