(あ、触れてる)


それだけのことが、どうしても気になってしまうなんて。









睦実とガンプラ談義をしていたのが、つい先ほどのこと。
多忙故にあまり休めていないのか、睦実はころりと横になって眠ってしまった。
寝息を立て始めた彼の体に毛布をかけて、ガンプラ作りに集中して、それから数十分。


「げろ?」


寝返りをうった彼の手が、己の足にこつりと触れている。
それに気づいた途端、ガンプラへの集中が一気に途切れてしまったのだ。


(気にしすぎ、かも)


ただ、触れているだけ。
それがこんなに気になってしまうのは、心に隠した気持ちのせい。
なんだかドキドキしてしまうのも、そのせいだ。


(綺麗だなー、睦実殿)


さらさらの灰色と、女性みたいに長い睫。
美人、という言葉がすとんと納まるような。
思わずこくりと唾を飲み込んでいた。


「…起きない、よね?」


ともすれば緊張で震える手を、そろりと彼の手に近づける。
眠っているのだし、大丈夫だと何度も己に言い聞かせて、大袈裟なくらいに深呼吸。


(ええい!)


触れていた彼の手を、ぎゅうと握った。


「……起きてない、でありますか…?」


睦実は相変わらず、夢の中。
くたりとした手のひらが、今確かに己の手の中にある。
眠ったままなことに安心して、ケロロは大きく息を吐いた。


「げろ〜…」


片思いの身で、何をしているんだろう、自分。
そんなことを思い、天井を仰いだ。


「どうなりたいんでありましょうか…」


どうなりたいかと問われたら、それは勿論、あんなことやこんなこと。
なんて考えたりするけれど。
片恋の身の上にしてみれば、望むことは1つだけ。


(自分に向けて、笑いかけてほしいだとか)


たったそれだけで、幸せになってしまうのに。


「…げろっ!?」


物思いに耽っていた思考が止まって、間抜けな大声が飛び出した。
一方的に握っていた手から、ぎゅうと握り返されたからだ。


「ふふ…」


見れば、閉じていた蒼がこちらを見ていて。
にこりと、綺麗に微笑んでみせた。


(笑ってくれるだけで)


「睦実殿ぉ…」
「何?」
「…何でもないであります」
「そっか」


今でも幸せだけれど、その先へ、手を伸ばしてもいいだろうか。
目が覚めてもまだ繋いだままの手に、ありったけの思いと願いを込めて、ぎゅうと握った。


「あのね、睦実殿」



君に近づきたい。





***

紗杜様へ27623hit記念でした。
リクエストは『ケロ睦で片思いから両思い』。

両思い感があんまりありませんが、この後近づけたんだと思います。

2010,1,24
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