(あ、珍しい)
普段は外さない白いヘッドフォンが、首元まで下ろされている。
金色の髪の間から覗く耳に、自然と目が向いた。
「気まぐれ?」
「何がだィ」
「それ」
「たまにはなァ」
手元のパソコンを叩きつつ、喉を鳴らして笑う。
人の耳なんて珍しいものではないけれど、ヘッドフォンを常備しているクルルは別。
(白いなぁ)
外に出ないクルルは肌が白い。
耳も例に漏れず、やっぱり不健康なくらいの白さだ。
しげしげと見つめていたサブローは、特に何も考えずに手を伸ばした。
「クッ」
つい、と指先で耳に触れた。
クルルの肩が大きく跳ねて、それもまた珍しいなと思う。
「おまっ、何して」
「え、いや…気まぐれ?」
予想以上に反応が大きくて、なんだか面白い。
くすりと笑うと、決まりの悪そうな顔でクルルが睨んでくる。
「くすぐったかった?」
「そりゃお前だろ」
「わ、わっ」
笑ったのが気に入らなかったのか、今度はサブローの耳に触れてくる。
ついでに押し倒してくるのだから始末が悪い。
「そんな照れないでよ」
「うるさいぜェ」
白かった耳が、今ではほんのり赤かった。
***
触られるのもだけど、サブローくんにされるってことに照れてしまえばいい。
2015.1.28