「光子郎はん、あれは何ですのん」
「光子郎はん、これは何でっか」
「なぁなぁ、光子郎はん」
いつもと正反対なこの状況がなんだかおかしくて、くすりと笑ってしまう。
普段なら、デジタルワールドのことを自分が尋ねて、彼が答えてくれていたのに。
東京に移動した途端に、立場はころりと逆転してしまった。
「あれはね…」
簡単に説明すると、緑色の大きな瞳がきらきらと輝く。
そして、あれもこれもとさらに知りたいことが増えていく。
新しいものを探して、きょろきょろと辺りを見渡して。
(きっと僕も、そんな風だったんだろうな)
世界の全てが未知で溢れている。
その全てが知りたくて、知ることが楽しくてたまらない。
知りたがる心。知識の紋章。
つくづく、己の本質を的確に捉えていると思う。
「はぁぁ、面白いでんなぁ」
「そうかい?」
「はいな。光子郎はんは、いつもこんな気持ちでいはってんなぁ」
やはりパートナー故だろうか。
自分とテントモンは、どこか深いところが似ているんだろう。そんなことをふと感じて、くすりと笑う。
「光子郎はんが、いつも楽しそうやったわけが、よう分かりますわ」
「僕もね」
(わて、光子郎はんの何でも知ろうとする探究心が、好きやで)
あの時の言葉を思い出して、自然と零れていた。
「テントモンの知りたがる心、好きですよ」
言ってから、なんだか気恥ずかしくて俯いてしまう。
その先で、こちらも照れくさそうなテントモンと目が合って、やっぱり笑えてしまった。
***
知りたがるテントモンもかわいい。
2015.1.13