ぱたぱた。ぱたぱた。


「んんーっ」


今日も今日とて、パタモンは1人きりで空を飛ぶ。
以前、飛ぶのが遅いと皆にからかわれてから、こっそり飛ぶ練習を始めたのだ。


(皆を、びっくりさせてやるんだから)


だから、練習のことはタケルにも内緒。
そっと皆の輪から離れて、くるりくるりと宙を飛び回る。
けれども、そんなに簡単にはいかないもので。


「はぁ…」


くたびれてしまって、ぱさりと草の上に着地する。
そのまま伏せて、休憩を決め込んだ。


(どうして、うまくいかないんだろう)


速く飛べないだけじゃない。
進化もうまくできなくて、おまけに皆より一回りも小さい体。
うまくいかないことばかり。
情けなくなって、泣きたくなることばかり。


(でもね)


じわりと潤みそうになる目を、きゅっと閉じる。
何も見えない視界に、大好きな笑顔が浮かんだ。

同じくらいに小さくて、うまくいかない自分が歯がゆくて。
泣き虫だけど、それでも、いつだって頑張ることを忘れない人だ。


(タケルがいるんだから)


1人で泣いているわけにはいかないんだ。


「よーし!」


ぺちんと頬を叩いて、目を開く。
同時に、遠くから馴染んだ足音がした。


「パタモン、どこいってたの」
「タケル!」


少し離れたところで、にこりと笑う、その人がいる。
探してくれていたんだ、と気がつくと、少しの罪悪感と、いっぱいの嬉しさで自然と笑えた。


「タケルーっ!」


こちらに向けて伸ばされた小さな手。
自分の精一杯の速さでもって、大好きなその手の中に、飛び込んだ。





(僕、がんばるよ。タケル)




***

パタモンには一生懸命、って言葉が似合うと思う。

2015.1.13
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