泣いたせいで、少し目元がじんじんする。
赤く腫れていないだろうか。


(こんなに泣いたの、久しぶりだな)


やっと、両親と向き合えた。
自分が、もったいないくらいに深い愛情の中にいたのだと、実感した。
踏み込めずにいた今までの時間を、少し後悔するくらいに。


(胸が軽くなった)


涙を拭って、テントモンを探してきますと言い残して、歩き出したのが数分前。
何も言っていないのに、自然と家族だけにしてくれたテントモン。
心配させたかもしれない。そう思うと、自然と足が速くなる。


「テントモン」


だから、ひょいと柱の影から顔を覗かせたパートナーに、少しだけほっとした。


「探しましたよ、テントモン」
「話は終わったんでっか?」


テントモンは、何も聞かない。
ただ、おそらく腫れた目元を見たのだろう。
分かりにくいけれど、彼もまた、ほっとしたような顔をした。


「…良かったなぁ、光子郎はん」


静かで、それでいて、少し滲んだ声。
慈しむようなそれに、気づいた。


(あぁ、知ってたんだ)


両親のことを、テントモンに相談したことはないのに。
彼はきっと、気づいていたんだ。
己の迷って苦しんだことも、それが今日、解けたことも。

いつから知っていたのかな。
己の正体を指摘した、あの工場で?それとも、東京に来てから?
分からないけれど、でも。
テントモンは、何も言わないで、ずっと心配してくれていたんだ。

それだけで。


「テントモン…」


ぺたんと、テントモンの前に座り込む。
たくさん泣いたはずの瞳が、また熱くなった。


「ちゃんと、甘えれたんやなぁ」
「う、ん」
「光子郎はん、良かったでんなぁ…ほんまに、」
「…うん」


ほんまに、良かったなぁ。

その言葉が、声が、あまりにも優しく、心に沁みたから。
ぎゅうと、小さな体に抱きついた。


「テン、ト、モン」


あぁ、こんなに、愛されていたんだ。
両親にも、パートナーにも。
不器用な自分のことを。

こんなに、こんなに…


(いつか、返していきたい)


愛された分を、必ず。



「光子郎はん…」


小さな手が背中に回ったのを感じて、また、腕に力を込める。
2人分の小さな嗚咽が、雫と一緒に重なった。



***

泉一家をこっそり見守って号泣してるテントモンが好き。
光子郎はんが、一歩踏み出せた日、ですね。

2014.12.30
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