不思議が起きても、あまり驚かなくなった気がする。


「わぁー……かわいいね」


自分より年上のはずの、睦実が小さな子供になっているのを見ても、冬樹の口から零れたのはそんな言葉だった。


「またクルルの発明品なの?」
「だろうな」
「これ、何回目だろ」
「ま、時間制限がきたら元に戻るでありますよ」
「ていうか、日常茶飯?」


慣れとは怖いもので。
状況をすとんと飲み込むと、皆の視線は小さな子供に集中する。
灰色の髪はいつもと同じ。蒼い瞳は大きく丸い。
ぐっと縮んだ身長のために、下から見上げてくる姿が、無性に愛らしかった。


「睦実殿、我輩たちのこと分かるでありますか?」


黙ったままの睦実に、ケロロが尋ねてみる。
睦実はぱちぱちと瞬きをして、それからこっくり頷いた。


「けろろ」


続いて、冬樹、夏美、モア、ギロロと指差していく。


「ふゆきくん。なつみちゃん。もあちゃん。ぎろろ」
「うん、正解ですよ」
「睦実さん、とってもかわいいです。ていうか、母性本能」
「…ふん」


よくできました、と、冬樹に頭を撫でられて、睦実はちょっぴりご機嫌らしい。
にこりと笑う顔は、大人びた普段と違って、あどけない。
それは、たとえ恋敵と考えるギロロの目にすら、やっぱりかわいらしく映った。


「睦実さ…あ、子供に敬語はやっぱり変かなぁ」
「じ、じゃあ…睦実、くん?」
「夏美殿、顔が真っ赤でありますよ」
「夏美…!」


きゃああと照れる夏美と、苛々しつつも今の睦実に向けてはいけない気がするギロロ。
いつもの風景に、苦笑するケロロたち。


「……」


睦実はそれを、ぼんやりと眺めていた。
楽しそうに、けれど、どこか寂しげに。
何か言いたげに、小さな口が、声を出さずに少しだけ動いた。


「……、」
「なんて顔してんだィ、睦実」
「!」


後ろから、名前を呼ばれてぱっと振り返る。
地下から上がってきたらしいクルルが、すぐそばに立っていた。


「くるる!」


途端に、蒼い瞳が、今までで一番きらきら輝いて。
嬉しそうに、クルルの足にしがみついた。


「くるるーっ」
「全く、とんだ寂しんぼじゃねェか。クックック」


いつもの笑いを響かせつつ、くしゃくしゃと灰色の髪を撫でる、クルルの手。
ぶっきらぼうだけど、なんだか優しい手つき。
それが嬉しくて、睦実はぎゅうとしがみつく手に力を込めた。


「…え、何でありますかあれ」
「やっぱり、クルルが一番落ち着くのかなぁ」


クルルにぐりぐりと頭をこすりつけて、満足げな睦実。
他の誰にも見せなかったその様子に、かなわないなと笑いがこぼれた。



***

セイ様へ40000hit記念でした。
リクエストは「クル睦←all ギャグ甘 睦実争奪戦」でした。

ギャ…グ?
争奪戦はクルルの圧勝なんですけど、思ったよりギャグになりませんでしたごめんなさい!

2010,4,24
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