(ガルダモン進化成功の後)
涙は、悲しいときに流れるものなんだと思っていた。
ガルダモンからピョコモンへと姿を変えて、空の隣にそっと寄り添う。
空の愛情に触れて、進化ができた。
ヴァンデモンを倒すまではいかなくとも、互角に戦い、無事に逃げ切っている。
空を守ることはできた、はずなのに。
「空、どうして泣いてるの?」
空の涙が、止まってくれない。
「空、どこか怪我したの?どこか痛いの?」
「…違うのよ」
「空…」
ぽろぽろと零れる雫が止まらない。
それだけで、ピョコモンもなんだか苦しくなる。
まるで自分のことのように、心がきゅうと締め付けられる。
「違うの、悲しいんじゃないの」
「え?」
「嬉しくて、涙が止まらないのよ」
嬉しい?
よく分からなくて、ピョコモンは首をかしげた。
「どうして、嬉しくて涙が出るの?」
涙は、悲しいときに出るものじゃないの?
痛くて苦しくて、零れるものだと思っていたのに。
(嬉しい涙なんて、私は知らないわ)
「嬉しいの。お母さんの心に気づけたことも、お母さんと同じ愛情を持っていたことも」
空の手のひらが、ピョコモンに触れた。
「あなたに、愛情が伝わったことも」
全部嬉しいの。
そう言って、空はくっと涙を拭った。
それからまた、すぐに雫が溢れて落ちる。
「空、」
良かった。悲しいんじゃないのね。
それだけで、ピョコモンの心もふわりと軽くなる。
「ありがとう、ピョコモン」
泣きながら、それでも空は綺麗に微笑んだ。
***
嬉し泣きって、すごく幸せなものだと思う。
2014.11.27