緩やかなハーモニカの音色に耳を傾ける。
風のように吹き抜けるようなそれは、ガブモンのお気に入りだ。
ヤマトに似てる、と思うから。
(音色と同じくらいに、ヤマトは優しいからね)
照れ屋で、なかなか本音を言葉にしない彼だから。
形のないメロディに、表に出さない彼の心がこめられている。
ヤマトの隣で、目を閉じて音を拾いながら、ふと気がついた。
(でも、俺は?)
隠れているヤマトの気持ちは、音を介して己に伝わってくるのに。
同じくらいに照れ屋な自分の心は、ヤマトに届いているのだろうか。
(ヤマトはどう思うのかな)
言葉にするのは照れくさい。
けれど、歌が上手でない自分は、ヤマトのように音に託すことなんてできない。
どうしたら、うまく伝えられるんだろう。
そんなことを考えていると、ぼんやり頭に浮かんだのは、他のパートナーたちがよくしていることだった。
(ヤマトに届くかな?)
本当は、照れくさいけれど。
似た者同士の2人なのだ。きっと無理やり言葉にするよりも、真っ直ぐ届くはずだから。
「…!」
ぎゅうと、すぐ隣のヤマトに抱きついた。
途端に、ハーモニカがヒュっとちょっぴり間抜けな音を立てる。
「っガブモン!?」
「……」
慌てたみたいな声。。
そろりと熱い顔を上げると、ヤマトの顔も、同じくらいに赤かった。
青いつり目を大きく見開いたその表情は、いつものクールな彼らしくない。
「ど、どうしたんだよ、急に」
「…ヤマト、照れてるの?」
「それはお前だろ!」
珍しくつっかえた言葉がおかしくて。
いつもの掛け合いなのに、どうしてか少し笑えた。
やっぱり恥ずかしかったのか、ヤマトはふいとそっぽを向く。
「ヤマト」
それでもこてんと体重を預けてくれた。
たったそれだけで、分かることがある。
「へへ…」
確かに伝わった、ということ。
***
照れ屋な2人が好き。
2014.11.27