吉祥学園にて、敵性宇宙人の反応あり。
クルルからの情報を聞き、ギロロはすぐさま学園へと飛んだ。
何しろ、あそこには夏美をはじめ皆のパートナーがいるのだ。
「あれは…」
ソーサーで飛んでいたギロロの目が、学園の屋上に留まる。
アンチバリアに包まれた敵が数体。
何かを囲んでいるようだ。
「サブローか?」
大方、屋上で昼寝をしていたのだろう。
本来授業中である時間帯だ。
恋敵?ではあるが、ギロロはサブローを見捨てることはできず、ソーサーでサブローの上空へ移動した。
「サブロー!」
「あれ、ギロロだ」
返ってきた声はとぼけた風で、敵に囲まれた状態にしては不釣合い。
たった1人、屋上の真ん中に立つサブローを、四方から囲む敵は十を越している。
あまりお気楽な状態ではないが、危機的な状態にあるはずのサブローにはいささか緊張感がかけているようだ。
「もしかして、クルルの指示とか?」
「その通りだ。サブロー、下手に動くなよ」
「ギロロ、離れててね」
「は?」
妙に会話がかみ合っていない。
ギロロは銃を取り出したが、それよりも、サブローがスケッチブックを開く方が早かった。
「いくよ?」
走り出す実体化ペンの筆先に、ギロロはまずいと判断する。
あのペンの威力は充分に理解しているからだ。
咄嗟の判断で、ソーサーはサブローから大きく距離をとった。
「!」
書き上げた紙を一枚、足元に叩きつける。
同時に飛び掛ってきた敵は、サブローまであと一歩のところで動きを止めた。
いや、止められたのか。
バチ、と電気が弾けるような音がして、全ての敵が爆発した。
「恐ろしいな…」
それは強烈な威力を誇るペンか、その力を自在に操る少年だろうか。
自覚のないままに、ギロロは小さく呟いた。
「ふふ、成功♪」
空から降りてきたギロロに向けて、サブローは満足げに笑ってみせた。
「うまくいったでしょ」
「そうだが……サブロー」
「ん?」
そのいたずらっぽく細められた瞳だとか。
く、と片方の口角を上げた口元だとか。
「笑い方が…クルルに似てきたな」
「え?」
サブローはきっと分かっていないのだろうけど。
似たもの同士ということか、とギロロはなんだか恐ろしい心地がしたのである。
***
たまに出てくる、サブローくんのいじわるっぽい笑い方が…好きです。ふは。
2014.9.1