はて。


「…?」


ついさっき5日間徹夜をした仕事が終わった。
やっと休める、と久しぶりに簡易ベッドに潜り込んだのだが、どうしてか眠くならない。
ごろごろと寝返りをうっていると、頭に浮かぶのは仕事中会わなかった相棒のこと。


「……あーあ」


5日分の睡眠よりも相棒のことなんて、どうかしているみたいで。
ため息を1つ零しつつ、むくりと起き上がり、いそいそとラボを出た。










「あ、お仕事終わったんだ」
「よォ」


久しぶりの睦実は、俺を見て嬉しそうに笑ってくれた。
真剣な顔で読んでいたラジオの台本を放り出し、こっちにしがみついてきてくれた。


「へへっ、1週間ぶりだね♪」
「クックー」
「…?」


睦実は俺の顔をまじまじと見て、首をかしげた。


「どうしたの?」
「ク?」
「疲れた顔してるよ。寝れば?」


睦実が手を伸ばして、顔にかかった俺の前髪をひょいと掻き分ける。
澄んだ蒼に自分の顔が映っているのが見えた。


「んー」
「…眠れないの?隈できてるのにさ」
「……」


睦実の指が頬に当たった。
さすが電波コンビってとこか、睦実には伝わってしまうらしい。


「…眠れねェんだ」
「変なの」
「知らねェよ」


睦実はちょっと考えた後、俺の手を掴んだ。


「クルル、おいで」
「は?」
「寝よう」


スタスタと歩く睦実が向かうのは寝室。
睦実はストンとベッドの上に座った。


「ほら、クルルー」
「……」


ちょこんと正座をして、なんだか嬉しそうな顔をして、足をぽんぽんと叩く。


「おいでよ」
「…何やってんだィ?」
「ん、膝枕ってやつ?」
「……」


なぜそんなに嬉しそうなのか。


「ククッ…」


しょうがないから、睦実の考えに従ってやることにする。
なんて思いながら素直に睦実の膝に頭を乗せるクルルも、やっぱりなんだか嬉しげで。


「……」


いつだったか、ギロロが夏美の膝枕がどうとか言っていたか。
ケロロと一緒に大いにからかってやったが、なるほど、彼の言うことが分かった気がする。
頬に伝わるあったかさも、ほのかに感じる優しいニオイも。
悪くない。むしろ、


「ククッ…」
「何笑ってるんだよ」
「さァ?」


ほんの少し眠たくなってきた。
けど、まだほんの少しだ。


「ほら、寝てもいいよ」
「ク…」


睦実の指が髪を撫でてくれた。
くすぐったいような、こそばゆいような、変な感じ。
ちっとも嫌じゃなかった。


――♪


「ク…」


歌声が聞こえた。
そばから、優しい声が。


「……」


柔らかい声が奏でているのは、子守唄。

―♪


「…クク」


そんな歌声に誘われるようにして、だんだん眠たくなってきた。

なんでこんなにあたたかいんだろう
どこかがフワフワする

(子守唄なんて、初めてだ)



自然と、目蓋が落ちた。







「クー……」
「…寝ちゃった?」


見下ろすと、穏やかなクルルの寝顔。
ゆっくりした寝息を聞きながら、睦実は小さく笑う。
そっとかけたままだったメガネを取った。


「お疲れ様、クルル」






***

HAL様こっそり捧げる3周年および80000hit記念です。
歌う電波シリーズw

2010.4.24
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