2人でいるとき、沈黙は全く苦ではない。
それぞれが別々のことをしていても、会話がなくても、それが当たり前。
一緒にいる、ただそれだけの空気が、2人とも好きだったから。


「……」
「……」


珍しくパソコンではなく、携帯をいじっていたクルルが、ふいに顔をあげる。
いつになく真面目な顔をして、ラジオの台本を眺める横顔。
澄んだ蒼と、長い睫。
何も言わずに、ただ見つめていた。


「……?」


視線に気づいたか、サブローが顔を上げた。
目と目が合う。
そして、ふわりと微笑んだ。


「……」


何、と無言で問いかける瞳に答えるように、なんでもないと首を振る。
サブローは納得したようで、そのまま台本に目を落とした。
けれど、クルルは視線をサブローに向けたまま。


「……」
「……」


また緩やかに時間が過ぎる。
ぱらぱらとページが捲れる音。それだけ。
なんだか悪くない。


「……?」


またサブローが顔を上げる。
目と目があって、また笑った。


「……」


クルルは首を振る。
サブローはまた視線を下げる。


「甘えんぼ?」
「いんやァ」


気づけば真っ暗になっていた携帯の画面。
そのままその辺に置いて、空いた手は灰色の髪に伸ばされる。
猫っ毛を指に絡めつつ、時々耳や首筋をくすぐると、サブローは小さく身を捩る。


「クルル」


目と目があう。3回目だ。
ふわりと弧を描く口元。


「別に」
「ふぅん」


また視線を落とす横顔を見つつ、指は止まらない。

特に意味はないのだけれど。
ただ、目と目があった時に、サブローがふんわり笑うのが好きで、それが見たくて。
なんてことのないやりとりを、繰り返してしまうのである。



***

淡白で素朴ないちゃこら、が電波らしいかなと。

2014,8,5
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