ふらりと気まぐれに外に出た。
フライングボードに乗ってあてもなく飛んでいると、自然に向かうのは吉祥学園。
無意識と言いつつ、相棒がいるであろう場所ばかり巡ってしまうことは、自覚済みではある。
「……あ?」
サブローがいつもサボって昼寝をしている屋上。
いるだろうと思ってきて見れば、案の定人影がある。
けれど、その人影は2つあった。
「あれ、クルル?珍しいね、外に出るなんてさ」
「…何やってんだィ?冬樹」
壁にもたれかかるようにして、サブローと冬樹が座っていた。
サブローは当たり前のように夢の中。
冬樹の肩に頬を乗せて、思いっきり冬樹にもたれかかっている。
「サブローさんが眠たいっていうからさ」
「とうとうお前もサボりかァ?クックー」
「ううん、今は昼休み」
冬樹のニコニコと笑う顔が、何故だか気に入らない。
無防備な顔が、冬樹に近いことも。
自分以外の誰かに身を預けていることが、何よりも。
「……」
冬樹の指がサブローの髪を梳いた。
サブローはもそもそと冬樹に擦り寄る。
「あは、サブローさんてば子供みたい」
冬樹は俺の方を見て、二コリ、笑って見せた。
一見すると敵意も悪意も垣間見えない、それ。
しかし。しかしだ。
「どうしたの、クルル?」
「…別に」
分かっていて尋ねてくるのが、また。
クルルは心の中で盛大に舌打ちをした。
この場にいたくなくて、挨拶もせずに空に舞い上がる。
眉間の皺は、なかなか消えそうになかった。
その夜。
「クルル、なんか怒ってる?」
「…別に」
サブローの家で2人っきり。
2人でソファに座っているけれど、俺とサブローの間にはほんの少し距離があった。
「サブロー」
「ん?」
「こっち、こい」
「?」
不思議そうに寄ってくるサブローを抱きしめた。
なぁ冬樹、とクルルは心の中で呟いてみる。
(お前には、こんなことできないだろ?)
それだけで、むしゃくしゃしていた心がスッと落ち着いていった。
ついでに唇に触れるだけのキス。
柔らかい。
「サブロー、俺のこと好きかァ?」
「…え、何、いきなり」
「好きか?」
いつになく真面目な低い声で囁いて、大きな蒼の瞳を覗き込む。
サブローはこういうのに弱いということは、よーく知っている。
「……好きだよ?」
「本当に?」
しつこく問いかけてみると、サブローが身を乗り出して、囁き返してきた。
「知ってるくせに」
それだけで、不思議なくらい安心して。
ついでに少しどきどきと胸の音が早くなる心地がして。
我ながら単純だ。
「ククッ」
イライラも不安も、とうに忘れていた。
***
雪様へ、10000hit記念とかいって勝手に捧げちゃいます。
我が家の冬サブが好きと言ってくれる雪様へ、冬サブ発信!
2010,8,28