(睦実くん女の子です)







「いやまぁ、うん、一応俺、女なんだよね。はは」


困ったようにして、睦実は笑いながらあっさりとそう言った。








きっかけは数分前まで遡る。


「貴様!許可なくこの家に入ってくるな!」
「夏美ちゃんはいいよって言ってくれたけど」
「あ、当たり前じゃないですか!!……ギロロは黙ってて」
「なぜだ!!」


クルルのところへ遊びに行くついでに、睦実は日向家を訪れる。
その度にギロロに睨まれるのもお約束だ。


「今日こそは許さん!」
「ぉわっ」


激昂したギロロがサバイバルナイフを持って2人の方へ突っ込んでくる。
咄嗟に夏美を庇おうとして反応が遅れた。
ナイフは浅くだが睦実の胸元を一筋切っていた。


「いたた…」
「ギロロ!あんた、」
「……」
「……あれ?」


切った張本人のギロロ、リビングにいたケロロや冬樹も黙り込んだ。
裂けた服の中に見えたのが男の平坦な胸板ではなかったから。


「…あ、ばれちゃった」


この状況下でも睦実の声はどこかとぼけたようだった。








地下から引っ張り出されたクルルを含めて、全員がリビングに集合する。
なぜ隠していたのかと問い詰めれば、隠すつもりはなかったけどばれなかったからじゃあいいかなって思った…とのこと。


「うん、いろいろあるんだよね…ごめん」


少し俯いた様子に、それ以上追求はできなかった。
すると自然と皆の視線はクルルに集中する。


「で、クルルは知ってたの?」
「まァな」
「会ったその日に分かってたよね」
「クックー」


さすが相棒だ。
クルルがどこか満足そうに隣にいた睦実の肩を引き寄せる。


「ま、バレちまったんだ。これで心置きなく女扱いできるだろォ?」
「それもそうだね」
「ク、クルル曹長ー!睦実殿にセクハラは厳禁であります!!」
「睦実さんも服貸しますから着てください!破けたままじゃないですか!!」
「わ、夏美ちゃん…」


ドタドタ、と夏美が睦実の手を引いて2階に駆け上がっていく。
残された男性陣の沈黙の中、クルルは1人いつものように笑った。


「ククッ、何も心配いらねェってなァ」
「心配?」


クルルはふと天井の方、2階にいるであろう相棒の方を見た。


「女とバレた時にあんたらがどんな反応するか不安だったのさ。あいつも繊細な女の子ってわけだ」
「睦実殿が女の子でも、睦実殿であります!」
「そうだね、変わらないよね」
「…ふん」


にこりと笑うケロロと冬樹、何も言わずにそっぽを向いたギロロも心は同じだろう。
クルルは少しだけ柔らかく笑って、それからニヤリと笑い方を大きく変えた。


「そういうわけであいつも女だ。あんたら、もしあいつに勝手に手ェ出したらぶっ飛ばすからなァ」
「……はい」


これからも、彼らは彼らのまま。
ずっと。



***

さや様へリクエスト。
お題は「クル睦♀ 女の子だってバレる話」

隠してる理由が思いつかなかったのでスルーで。
思ってたよりもクルルが睦実ちゃんにベタ惚れのようです。幸せになれよ!

2012.5.5
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