「……どうした。首無」


昨夜、奴良組ではおなじみの宴会があった。
一晩中首無を見かけないなと思ったら、どうやら誰かに酒を飲まされたのか、早いうちから宴会から離脱していたらしい。
部屋で布団も出さずにひっくり返っているのを、イタクは明け方になって発見した。


「バッカでねーか…」


押入れから布団を引きずり出して胴体の方にかける。
少し離れたところに転がっている首を、イタクはそっと持ち上げた。


「……」


首無の寝顔は穏やかで、綺麗だなと思った。
首を自分の顔の高さまで持ち上げて、じーっと見つめること数十秒。


「……!」


自分のしていることに気付いて、ばっと首を下ろした。
無意識のうちに首無の顔が見えないように胸にぎゅうっと抱きしめる。
顔が、熱い。


「……」


こうして自分が振り回されるのは全部こいつのせいだ、とイタクは不貞寝をするようにごろりと畳に横になった。
そういえばもう夜明けで、イタクはまだ眠っていなかった。


「……」


くぁ、と欠伸を1つして、イタクは目を閉じる。








「……?」



目が覚めると、視界は真っ暗だった。
一瞬びっくりして、それから自分が何かあたたかいものに包まれていることに気付く。
小さな寝息が聞こえて、上を向けばイタクの寝顔が見えた。


「!!」


驚きのあまり、首と離れたところにある胴体が同時にびくっとしたのはおかしな光景だっただろう。


(え、どうしてイタクが、寝顔がかわいいとかそうじゃなくて、いやかわいいんだけどなんで!?)


首無は頭をフル回転させて状況を把握した。
もう日は昇っているけれど、宴会明けの奴良家で早起きする者は少ない。
首無は胴体にかけてあった布団をイタクにかけ自分もごそごそと布団に入る。
少し冷えた身体をそっと抱きしめた。


(寝顔、やっぱりかわいいな…)


イタクに抱きしめられたままの首はそのまま。
少し寝顔が見えにくいけれど、それでも十分だ。
彼が起きるまで、もう少しこのままで。


***
無言でお世話したり照れたりしてるイタクがかわいいかなって。

2012.1.21
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