はい、今日も始まりました、623の俺ラジオ。
やっぱり少し声がおかしいかな?
ちょっと嗄れちゃって…風邪じゃないんだけど、ね。
来週までには治してくるから、今日はお手柔らかにお願いします♪
それじゃあ最初の葉書――





ラジオから聞こえてくる相棒の声に、笑みが浮かんでしまうのはどうしようもない。
普段の柔らかな声が、今日は少し掠れているようで。
本人は随分気にしていたが、ラボの監視カメラが拾った夏美の声を聞いている限り大丈夫なのだろう。
少しハスキーな623さんも素敵だとか、お大事にって葉書を送ろうだとか。
本当に、リスナーに恵まれているようだ。


「愛されてんねェ…クックック」


急ぎの仕事もなく、彼のラジオの時間は休憩を決め込んだ。












日付も過ぎた頃、ふらりとサブローの家を訪れる。
ソファにもたれかかったまま、おかしな時間の来客に何も言わない。
前のローテーブルにはのど飴の袋。やっぱり気にしていたようだ。


「ククッ嗄れてんなァ」
「…誰のせい?」
「自分のせいだろ」


小さな体に抱きついて、体重をかけてそのまま押し倒す。
サブローは顔をしかめてぐいぐいと押し返した。


「昨日、そんなに良かったかィ?」
「!」


耳元で囁くと、カッと朱に染まる頬。
一瞬抵抗する手が止まったのをいいことに、そのまま強く抱きしめた。


「クルルの、せいだ…」
「何言ってんだ。あんなに声出してたくせに」
「そうさせたのは誰だよ」
「クク、俺様ァ」


早い話が、昨晩2人で寝たのが原因で。
翌日仕事があることもすっかり忘れて、散々泣いて喘いだ結果が、今日のラジオの声。
悪いことをしたとは思うが、サブローが色っぽく煽ってくるのがいけない、と己の中で責任転嫁をしておいた。
言ったら怒られるだろうか。


「あんな顔で煽ったお前が悪い」
「どんな、顔……っあ」


耳を甘噛みすると漏れる声に、クク、と喉を鳴らして笑う。
いつもより、少し低めの嗄れた声。
悪くない。


「ちょっ…来週までには治すって言ったんだから」
「来週まで、だろ?明日は別にいいじゃねェか」
「よく、ない…っ」


明日には、声が出なくなっているかもしれない。
頭の片隅でそんな考えが浮かんだけれど、都合よく忘れることにした。

翌日、さらに掠れた声でサブローに怒られるのだろうが。





***
満場一致でクルルのせいだと思う。

2014.6.11
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