(静戦)




クルルのことはよく知ってるから。
誰よりも、分かっているから。

だから、君を傷つける言葉が何なのかも、よく知っていた。



「クルルにしては、随分つまんないこと言うんだね」

顔を見なくても、背中で分かる。
珍しく、自分に対してクルルが怒りを露にしているのが。
それが分かってしまうのが、どうにも息苦しいと思った。

(震えるな)

己に何度も言い聞かせる。
今、本心を見抜かれてはいけないから。クルルを巻き込みたくないから。
だから今、全力で嘘をつく。

「だったら横からごちゃごちゃ言わないでよ」

背中を向けていて良かったと思った。
言葉と、声音と裏腹に、今の自分が弱った顔をしてしまっているのが分かる。

(ごめん、ごめん)
(傷つけて、ごめん)

(でも)


嘘をつくのは慣れているはずなのに、こうも苦しいことだっただろうか。
ひどい言葉を口にしているのは自分の方なのに、どうして泣きたくなるんだろう。

それでも。


(気づかないで)


ペンを持つ手が、静かに震えていた。



***
「つまんない」は電波にとってすごく重たい言葉で。
それをあえて言ったサブローくんの心境を思うと辛いです。
電波が愛しい。

2013.8.14
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