長引いた打ち合わせも終わって、帰宅したのは日付が変わる頃。
玄関まで辿り着いて、サブローは大きく息を吐いた。


(眠い)


流石に疲れた。
収録もあり、打ち合わせもありと長い一日だった。
幸い明日は仕事が休み。学校はサボればいい。
食事も風呂も、明日でいい。ただただ眠かった。


(さむ、)


ふぁぁ、と何度目か知れない欠伸をしつつ、ドアを開く。
人がいるわけもない真っ暗な部屋に、ただいまを言う元気もない。
コートを脱ぎ、荷物を置いてベッドに直行した。
ひんやりした部屋に小さく震えつつ、するりとベッドに潜り込む。と。


「わぁっ!?」


そこにあるはずのない熱に、思わず声を上げてしまった。


「え、ええ、なんで、え?」
「…うるせェ……」


まさかの先客、もといクルルが、目の前でもぞりと動いた。
たった今まで、ベッドで寝ていたらしい。眠たげな瞳がこちらを見た。


「おかえりィ」
「あ、ただいま。じゃなくてさ」
「遅かったなァ」
「なんでいるの?」


来る予定も約束もなかったはずだけれど。
それでも来ているのが相棒だと知ってはいるけれど。
頭の中は混乱状態だ。


「向こうじゃ寝れねェんだよ。隊長がうるさくて」
「あ、そうなんだ」
「てか、お前冷てェ!」
「クルルぬくいなー」


眠っていたクルルの体は、寒い中外出していた身にはじんわり温かい。
天然湯たんぽにぎゅうとしがみつくと、驚きで吹き飛んでいた眠気が戻ってくる。


「びっくりしたぁ…」
「でかい声出すなんざ、珍しいな」
「誰もいないと思ってたんだもん」


驚かされたけれど、クルルのおかげでベッドは温かい。
あぁこれで眠れる、と目を閉じるも、すぐには眠れなかった。


「もう寝るのか?」
「うん…」
「俺は眠くねェんだけど」
「寝てたもんね…」
「サブロー、」


不機嫌そうな低い声が、耳元で響く。
灰色の髪がもぞりと動いた。
何が言いたいのか分かってしまったけれど、だめだ。


「やだ。だめ。眠い」
「ちょっとだけ。どうせ明日はサボるんだろォ?」
「クルルのちょっとは全然ちょっとじゃない…」
「なァ、サブロー」
「やだって…っ」


今日は眠いんだから。
そんな抗議は、耳元の衝撃であっさり阻まれた。
小さく噛まれたらしい。


「ひ、」
「勝手にさせてもらうぜェ〜」


悪戯っぽく笑う声と、びりりと背中を走った、痺れに似た感覚。
完全に眠気がかき消された。


「…クルルのバカ」
「何とでも」




***

サブローくん家に遊びに来たけど帰ってくるまでずっと待つ内に眠たくなったので寝てたクルルさん。
という裏話。

20151220
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