カタカタとキーボードを叩いて、必要な処理を済ませていく。
3日かけた仕事もあと少し。
これが終われば、しばらくは休みだ。
緑の隊長が仕事を持ってきたら別だけれど、それは数日取り合わないつもりでいる。
「まだ?」
「あとちょい」
ラボの奥まったところには、最近は仮眠でも使っていなかった寝床がある。
そこでごろごろと転がっているのは、こちらも久々に休みをとれた相棒だ。
「…ねむ」
「待ってなァ」
なんとしても休みを死守したいのは、サブローと休みが重なったから。
2人でゆるりと数日過ごすためならば、己の隊長をトラップの餌食にしてでも仕事は請けないつもりなのだ。
(たまには我儘言わせて貰わないとなァ)
送信するデータにメールを添えて、本部へ送信。
数日ぶりにPCの電源を落とすと、クルルは大きく息を吐いた。
「終わった…」
じんわり、達成感に浸る。
これで数日は休みだ。誰が何と言おうと、休みなのだ。
気だるい体に力をこめて、えいと立ち上がる。
ラボの明かりを落として、ころころと相棒の転がる寝床へふらふら歩いた。
「あー…」
「お疲れ様、クルル」
ばすん、と布団に倒れこむ。
久しくベッドを使っていなかったことを思い出した。
くしゃりと頭を撫でられる感触と、触れそうなくらいに近くで笑う顔。
充分過ぎるご褒美に、無意識に頬が緩んだ。
「サブロー…」
ぎゅうと思いっきり抱きしめる。
心がゆるりと休まるのが分かって、柄にもなく幸せだとか思った。
けれど、同時に襲ってくる睡魔に、しまった、とも思う。
「クルル、眠そうだね」
「クぅ…」
これは誤算だった。
本当だったら、キスをして、抱きしめて、それからその、いろいろとするつもりだったのだ。
なのに今、何もできないくらいに、眠い。
徹夜続きだったことを、心底後悔したけれど後の祭りだ。
「おやすみ、クルル」
「なァ、サブロー」
とろとろとした眠気で思考がぼんやりする。
見れば、サブローもなんだか眠たげで、2人して夢うつつ。
「あした、は」
「うん」
「…あー、」
「うん、一緒にいるよ」
「ん…」
ふわふわした頭では、何か言うことも、考えることもできなくて。
ただただ、本能的に小さな体を抱きしめたまま、灰色の髪に顔を埋めた。
「おやすみ…」
もう限界。
目蓋を閉じると、すとんと落ちるように思考が途切れた。
***
休日の電波
2015.10.19