大人びているようで、実は誰よりも子供っぽかったりもする。


「…どこの木で寝てたんだィ?」
「あれ、バレちゃった?」


ひょこっと跳ねた髪のあちこちに葉がひっついていれば、誰だって分かる。
おどけるように肩をすくめて、サブローは帽子をとった。


「とんだやんちゃ坊主だぜェ」
「子供じゃないよ」
「あんまり汚すなよ」


猫のように首を振っても、絡まった葉はとれない。
特に綺麗好きという訳ではないけれど、土や葉がバラバラと散らばるのはちょっとどうかと考えてしまった。


「ほれ、とってやるから」


こっちにこいと手招きすると、嬉しげに近寄ってくる。
子供か。


「ちゃんと払ってきなァ」
「こんなに引っ付いてるとは思わなくてさ」
「はいはい」


絡まった葉を引くついでに、ゆるりと髪を撫でる。
くしゃくしゃになってもまだ、手触りは柔らかだった。


「くすぐったい」
「じっとしてなァ」


ふふ、と笑いつつ、サブローがきゅっと目を瞑る。
子供と思っていたけれど。


(睫が長い)


いけないいけないと思いつつも、一度考えてしまうとどうしようもない。
土を拭いながら頬を撫でると、くすぐったげに小さく身じろぎした。
あぁまったく。


(子供のくせに)


ふとしたときに、妙に色っぽいと感じてしまうのは、どうしたものか。
そのことに、ざわりと心が揺れてしまう自分にも呆れてしまう。


(でも、まぁ)



「!」


不意打ちで軽く唇を重ねると、大袈裟なくらいに肩が跳ねた。
ぱっと開いた瞳が、真ん丸になっているのがなんだか面白くて。
なんだか悪戯が成功したみたいで、少しばかり気分が良い。


「え、え、なに」
「つい」
「ついって、何、っ」


今度はしっかりとキスをする。
くぐもった息と揺れた体は、なるほど、子供じゃない。


「クク、」


大人のような、子供のような。
なかなか捉えられない、そういう感じが、実は心底気に入っている。


***

このギャップがいい。

2015.09.15
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