「っくし!」


大きなくしゃみと、ぞくりと震える背中。
季節はもう春だけれど、ラボの中は機械を冷やすために年中ひんやりとしている。
薄着過ぎたかもしれない、とサブローは少しだけ後悔した。


「風邪かィ?」
「ううん、ちょっと寒いかなぁって」
「ふーん…」


心配するなんて珍しい、なんてことを頭の片隅で思いつつ、サブローはまた体を震わせた。
自覚するまでは気にならなかったのに、寒いと気づくとなかなか無視できなくなる。
上着を出そうと実体化ペンとスケッチブックを用意すると、上から手元に影が落ちた。


「え、」


顔を上げると、降ってきたキス。
唐突なそれに驚いて、無防備に開いていた口へと舌が侵入してくる。


「…っん、ふ、ぁ…!」


啄ばむようで、どこか激しいキスに、思わず目をぎゅっと瞑った。
確かに聞こえた水音に、びくりと肩が跳ねてしまう。


「これでいいだろォ」


離れていく金髪は、クックックといつもの笑いを零して。
カッと体に熱が灯ったのは、嫌でも分かってしまった。


「…ば、か」


もう寒くない、けれど、それがなんだか悔しかった。




***

サブローくんって薄着ですよね。

2015.4.5
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