前夜祭




「これ兄さんにやる。オレはいらないから」

帰ってくるなりサスケが差し出してきた華やかな色柄の包みを受け取る。

開けてみると、こまごまとした甘いお菓子がいくつも包まれていた。

「こんなにどうした?甘い物嫌いなくせに」

「今日はそういう日なんだよ。兄さん知らないのか?」

「何を?」

10月最後の今日、五穀の豊穣を祝い、魑魅魍魎を祓う行事に里は湧いていた。

子供たちはそれぞれ仮装を楽しんで、お菓子をねだりながら家々を練り歩く。

と、サスケは簡潔に説明してやった。

「昔はオレよりなんでも知ってたのに。兄さん意外と世間知らずだな」

そう言われて、イタチは少し拗ねたように頬を膨らませた。

幼かった頃から大人と肩を並べて任務に就いてきたイタチにとって、馴染みの深い行事とは言えない。

サスケもそれはもちろん分かっている。

「冗談だよ、なに子供みたいに拗ねてんだよ」

そう言ってイタチの頭をいい子いい子と撫でた。

これではどっちが年上か分からない。

普通の兄弟だったら、兄が特別な少年でなかったら、当時の自分たちはもっと違っていた。

さっき道端ですれ違った子供たちのようにただ無邪気に戯れていられた。

「里にいた頃、妙な変化の術を使う奴が仲間にいたんだ」

思い出したようにサスケが言うと、その言葉の続きにイタチが耳を傾ける。

失われた兄弟の時間を今取り戻すのもいい。

やることは当時とはかけ離れていても。






 部屋の明かりを落として、一組だけ敷いた布団にサスケは正座して待っていた。

襖の開く音がすると、目を輝かせて振り返る。

「…これでいいのか?」

遠慮がちに寝室に入って来るイタチを上から下までじろじろ見て、サスケは声も出ずただ赤くなる。

「お前の言うとおりにしたんだ、何とか言え」

湯上りにいつも着ている寝衣をぶかぶかに着て、イタチはサスケの正面に座り込んだ。

薄暗い部屋でも至近距離まで近づくとはっきり見える。

座った拍子に、緩んだ胸元から覗く白い谷間。

本来兄には無いそれに目を奪われたかと思うと、サスケは慌てて目を逸らした。

お祭り気分で、ほんの遊び心で言っただけなのに、イタチはそれに応えてやっただけなのに。

眩しいとはこういうことなのだろう、サスケは本気で動揺していた。

「サスケ、ちゃんと見ろ」

イタチはサスケの頬を両手で押さえて、強引に自分の方に向ける。

湯上りの自分の指よりサスケの頬が熱い。

「…兄さん……かわいい……」

目を泳がせながらしどろもどろに言うと、イタチはくすっと笑った。

そのまま顔を近付けて唇を合わせる。

瞼に頬に顎に、何度も口づけながら、優しい手つきでサスケの首を抱き締めた。

サスケも一回り小さくなってしまった体を抱き寄せる。

やわらかくて温かくて、強く扱ったら壊れそうな細い体。

さっきから落ち着きがなかった体の芯が余計に疼く。

乱れていく呼吸に比例するように血が巡っていく。

「……………」

抱き締め合ったことで、都合上イタチは向かい合うサスケの膝に馬乗りになる形で座っている。

サスケのそこが硬くなっているのがイタチにもはっきりと伝わった。

「……してもいい…?」

イタチの返事を待たずに、サスケは裾の割れ目から手を忍び込ませた。

太腿の内側を撫で上げながら、もう片方の手で襟を掴んで強引に緩める。

滑らかな肌触りと、露わにされた真っ白な果実。

上半身をはだけても普段はない羞恥を感じて、イタチの頬が紅潮した。

太腿と臀部、胸の膨らみと、本来そこにない肉付きを堪能するように撫で回しながら、サスケはその白い首筋に吸い付いた。

「……っ…」

首筋から胸へ、頂上の蕾へと舌を這わせると、イタチの唇から微かに息が漏れる。

この姿に興奮しているのは自分だけでないと分かると、サスケの悪戯は一層エスカレートしていった。

「あっ」

太腿伝いにサスケの指がそこに触れる。

女物の下着などなく、当然寝衣の下は何も着用していない。

いきなりじかに触れられて、簡単に蜜濡れした。

「あっ、あぁっ……」

ヌルヌルと滑らされて、後から後から溢れ出てくる。

イタチにとっては、いつもと似ているようでいつもとは違った刺激。

いつもの兄から聞くことはできない少女の嬌声にサスケは余計に興奮する。

表面を上滑りさせていた指を内部へ滑り込ませると、イタチの肩がピクンと跳ねた。

「…あ…あっ……」

探し当てた源泉を多少乱暴に弄る。

乱暴にしてもその衝撃を飲み込んでしまうほど、蜜はとろとろと溢れ零れる。

ここまでされてもどかしくて、サスケの肩に回していたイタチの両手に力が入る。

挿入をねだられたことなど今までない。

サスケは衣服の中で痛いほど猛った自身を開放して、びしょ濡れになった部分に這わせた。

「ん……」

それだけでもう気持ち良くて、イタチの膝から力が抜ける。

「…入れるよ」

小さく呟いてから、サスケは我慢できなかったようにずぶずぶと兄の中へ入り込んだ。

「あぁ……」

自分の体を支えられず、イタチはサスケの体にしがみつく。

サスケはイタチの腰を両手でしっかり支えてから律動を始めた。

「ああっ、あっ…」

サスケの動きに合わせてイタチの声が漏れる。

普段こんな声を上げたこともない、その恥ずかしさにまた煽られる。

「はぁっ…あっ…」

「…気持ちいい…?」

緩急を付けて挿入出を繰り返しながらサスケが問いかける。

もう喘ぎ声しか出ないイタチに返事をする余裕はない。

「…オレはすげぇ気持ちいい…」

そう言ってイタチの両膝を開いて立たせた。

「あ…嫌……」

薄暗い室内とはいえ、秘部を丸見えにされてイタチは必死でそれを拒む。

「…はずかし…い…」

「なんで? 見せてくれよ…」

力が入らないなりにイタチが抗うと、サスケは余計に腰を激しく打ち付けた。

「ああぁっ」

弱点を突く卑怯な手でイタチの抵抗を封じる。

体勢的にもうサスケの体にしがみつくことができず、イタチは両肘を後ろについた。

あられもない体勢にされて激しく突き上げられながら、気持ち良くて仕方がない。

サスケはそのままイタチに覆い被さって、火が出るほど思い切りその体を突き上げる。

「あぁっ…サ…スケっ…」

体位を変えたことで、滑る蜜に任せて新たな摩擦が生まれる。

イタチは声も出せず、びくんと体を反らせてから到達した。

中で動きを止められるほどきつく締め付けられて、サスケも表情を歪ませる。

「っ……」

後を追うように痙攣を伴って、サスケも尽き果てた。

脈動が収まるまで、何度か緩く抜き差しを繰り返しながら。





「…この術…けっこういいな」

イタチの髪の香りを吸い込んでサスケが言う。

布団を一組しか敷かなくてよかった。

男2人で寝るには狭すぎるけど、今日は絡み合ったまま眠る口実ができた。

特に事後は一つの布団で寝たがらないイタチが、今日は珍しくサスケに抱きついたまま目を瞑っている。

「もうしない」

そう言う声も言い方も可愛い。

「…ごめん…また勃ってきた…」

また再燃してきたそこを押しつけるようにサスケはイタチの腰を強く引き寄せる。

「…もうしないって言っただろ」

「この術はもうしないって意味だろ?今日は何でもしてくれるって言ったじゃねーか」

こんな時ばかり子供のふりをするのはずるい。

そう思ってもイタチは弟の甘えた顔に弱い。

せっかく着直した服をまた脱がされながら、イタチはこの術を封じ手にする決意を固めた。









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