まだ朝だっていうのにすでに気温が高い。これからどんどん暑くなっていくのだろうと思うとげんなりとしてしまう。
登校中、隣を歩く真奈美がため息をついた。昨日はいきなり涙を見せたし、なにかあったのかと心配していた。ただでさえあたしたちが置かれた状況は理解するのが難しいことだらけで疲れたり悩んだりすることが多いと思う。それでもあたしたちなら助け合ってなんとかやっていけると思ってるんだ。


「どうした?また前の世界思い出した?」
「え?あぁ、ううん。今日、球技大会の種目決めがあるから少し憂鬱なの」


顔を覗き込んで聞いてみれば思っていたような悩みなんかじゃなくてこの世界でのちょっとしたことだった。なんだかんだ言ってここでの生活に慣れ始めているあたしたち。拍子抜けして笑ってしまった。「バカにしたでしょ」って真奈美は拗ねてしまったけれど、なんだか当たり前の日常をきちんと過ごせているような気がして嬉しかったんだ。
そのまま球技大会の話をして学校まで行く。A組の教室の前まで来ると、別れた。昨日はお昼を一緒に食べれなかったから今日は一緒に食べようねって約束して。
教室に入ってみると、いつもは朝練でHRが始まるギリギリの時間までいないブン太がいた。仁王はいなくてその代わりにジャッカルがあたしの席に座っていた。あいさつをして近づけば、あいさつを返してくれて、ジャッカルは仁王の席へと移る。


「今日は朝練ないの?」
「朝のうちに球技大会の競技決めするクラスが多かったから早めに終わったんだ」
「ふーん。そういえば真奈美も決めるって言って憂鬱そうだったわ」


席についてから聞いてみればブン太はガムを噛みながらダルそうに答える。あたしの席にだらしなく突っ伏していて、腕が投げ出されていた。確かにこの暑さじゃ、そんな風になっちゃうのもなんとなく分かるけど、ちょっと邪魔。腕を無理矢理どかしてそこに鞄を置いたら、少しムッとした目を向けてきた。そんなの全然気にしないけど。


「真奈美って運動できないのか?」
「いや、できないっていうか鈍臭い?」
「鈍臭いってお前…」


ジャッカルが聞いてきたから本当のことを答えてみれば、2人は呆れたような顔をした。なんだ、その目は。本当のことを言っだけよ。別に走るのが特別遅いとかそういうことじゃなくて、転んだりボールが顔面に当たったり、そういうことが多いのだ。でも2人はそんな真奈美を見たことがないから仕方ないのかも。体育もA組とB組は合同だけど、男女は別々だし、第一今はずっと陸上競技だった。だから、そこまで真奈美も転んだりなんてことはない。そして、1番の問題は別にある。


「プレッシャーに弱いんだよね。団体競技は特に苦手なんだけど、球技大会とかクラス対抗とかそういうのになっちゃうと余計に失敗しちゃうの」


きちんと説明すれば2人は視線を上に向けた。そして、苦笑い。きっと、その様子を簡単に想像できたんだろう。乾いた笑いがあたしたちを包みこんだ。


「そういえばうちのクラスはいつ決めるの?そんな話聞いてないけど」
「さぁ?知らねー」
「おいおい。そんなんで大丈夫なのかよ」


球技大会はもうすぐそこなのにあたしたちB組はまだそんな話は出て来ない。転校してきてこのクラスになってから初めての競技だし、このクラスに団結力があるとかないとかそんなことは分からない。とりあえずみんな仲いいし、感じはいいけれど。そこんとこどうなの。大丈夫?


「まぁ、ジャッカルんとこにゃ負けねぇよぃ」


あたしもジャッカルも普通に心配していたというのにブン太は笑顔でジャッカルを指差した。あぁ、ジャッカルの顔引きつってるし。この会話をジャッカルのクラスが聞いたら、どう思うんだろうか。でもまぁとりあえずあたしはそのブン太の顔を見ていたらなんだか安心してしまったので良しとする。




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -