first night


目が覚めると見知らぬ天井が広がっていた。鼻腔に届く薬品の匂い。ここは薄暗い病室だった。そして傍らに在る蒲公英頭。

「…ナルト?」

いつも突っかかってくるウスラトンカチがどうしてこんなところで眠っているのだろうか、それ以前になぜ自分はこんなところにいるのか。

叩き起こすことも考えたが、涎を垂らした阿呆ズラが目に入り気が削がれてしまった。奴の寝息だけが存在する空間で俺はもう一度目を閉じた。

暫くすると先程のマンセルを組んだ顔ぶれと、桃色の昔馴染みが訪れた。

「サスケ君、目が覚めたのね」
「あぁ。シカマル、俺は一体…」
「俺の方こそ聞きてえよ、俺達が見たのは倒れているお前だけだぜ」

髪を天辺近くで結んでいる頭の切れる男からは、珍しく歯切れの悪い返答が返ってきた。

「サスケくん、何があったの?」

記憶がない。何かを忘れているのは分かるが思い出せない。俺の視線は無意識に傍らの金糸から覗く首筋に向かっていた。

重い沈黙が空間を支配した。そんな空気を打ち消そうとしたのか、サイが口を開く。

「ナルトが凄く心配していたよ。涙まで流して。」

本当にサスケくんが大好きなんだから、といつもの笑みを浮かべてナルトの丸みの帯びた頬を抓ねる。

「ナルトだけじゃないわ!私だって心配したんだから」
「ついでにいのの奴も心配してたぜ?後で花持って来るかもな」
「もちろん僕も心配したよ」
「っていうか、こいつ何で寝てんのよ。サスケくん邪魔じゃない?」

サクラが悪どい笑みを見せる。

「あぁ、邪魔だな」

俺も似たようなそれを浮かべ、ドベの鼻を摘まんでやった。




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