*桜と火影と柑橘系。の続き







夜の帳が下りた頃、2人は立派な桜の木の上で集合した。

「サスケちゃんよ、肴持ってきた?」
「…持ってきたが丁度今捨てたくなった」
「うわっ!止めろってば!食べ物に罪はねぇぞ!」
「じゃあお前が罰を受けるか?」

サスケはやや大袈裟に指の骨を鳴らした。

「かっ勘弁してくれってば!」
「冗談だウスラトンカチ」
「お前が言うと冗談に聞こえねえんだよ…」

そんなことより花見だ!と肴を出すことを催促される。サスケは持ってきた弁当箱をナルトに放った。逆にナルトはサスケに酒を渡す。

「ナルト…これは何だ」

サスケが示したのは、ナルトが買ってきたグレープフルーツサワーだ。

「何って酒じゃんか」
「普通ビールだろうが!」
「安売りしてたんだよ、いいじゃん!恋の味だってばよ!」
「酸っぱすぎるだろ…まぁ俺らには丁度いいか」
「…おう」

サスケの発言と自らが先に言ったことの照れも来たのだろう、淡く頬を赤らめながらいそいそとナルトは弁当を開けた。

「…サスケ、これ嫌がらせか?」

予想通りの反応に口許が緩む。

「…どうした、ちゃんと作って来ただろ?」
「トマトの数多すぎだろ!つか色合い無さすぎるってば!」

赤黄緑だろ!と怒る男にふんと鼻を鳴らす。

「あるだろ」

長く骨ばった指が順にトマト、卵焼き、そしてトマトの蔕を指していく。

「屁理屈かよ!」
「んなことどうでもいいから花見しようぜ」

未だ不満が有りそうだが、辺り1面の桜を見渡す。

「きれーだな…」
「あぁ」

プチトマトを黙々と口にしていると、静かな空間で急にナルトの笑い声が木霊した。

「…何だいきなり、気持ち悪ぃ」
「いや俺さ、こんなに静かにサスケと花見出来るなんて思ってなかったから」

嬉しい、と照れ笑いを浮かべながらも真っ直ぐにサスケを見つめている。ナルトは里では誰でも知っている火影で、サスケはうちはの末裔であり里一番の色男だ。この2人が目立たない筈がない。あれほど騒いでいたが、実際に来れるとは思っていなかったようだ。

「…来年も来れるといいな」
「此れからもずっと…だろ?」
「当たり前だってばよ!その時もおかかおにぎり作ってくれよ」
「うちの自家製だから高くつくぜ?」
「あのーサスケさん、これもしかして有料?」
「体で払えよ」
「…冗談デスヨネ?」
「…どうだろうな?」

舞い散る花と同じ名を持つ補佐官が迎えに来るまで、2人はやや酸味の強い酒を酌み交わし続けた。