教室へ戻った私を見つけて、何を思ったか空き教室に連れ込んで事に及ぼうとした騎士君に何とか話をつけて保健室にたどり着いたのが下校時刻15分前。
カルラちゃんに換えの服をお願いされて保健室を出てから10分以上経った事になる。
怒られるかなとちょっとだけ途方に暮れつつ保健室のドアをノックして開いた。
「失礼します!カルラちゃん遅くなってごめ…ん…?」
「…遅かったな」
 保健室にいたのは鏡藍先生のみ。
何処かふわふわした目で私を見て、すぐに机の方へ向かってしまった。
「…先生、カルラちゃんは?」
「…」
 先生は私の問いにちらりと一番私に近いベッドを見る。そういえばカーテンが閉まっていて、中に誰かの気配がある気がする。
もしかしてと思いながらそっとカーテンを開くと、私の探し人がそこにいた。
何故かこんもりと布団の中に籠って。
「……おーい、カルラちゃん」
「…、…!あ、ね、猫市ちゃんか!!おはよう!!良い朝だね!?」
「思いっきり夕方だよカルラちゃん…雨降ってるし」
 窓の外は少し雨の威力は収まったもののまだ小雨が降り、薄暗い。とても良い天気とはいえなかった。
そうだよね!ごめんね!と何処か大袈裟に言うカルラちゃんは耳まで真っ赤になっている。
そしてしきりに首元を気にして布団で隠す。
何となくその仕草だけで、私がいない間2人の間に何が起きたのか察してしまった。わかる自分に何となく悲しくなる。
カーテンの内側から頭を出して鏡藍先生の方を見ればこちらを気にしていた先生と目があった。
その途端慌てて目を反らして私に背を向けたため、黒い尻尾のような髪がぴょこんと白衣の首元で跳ねる。
「悪い狼さんだったんですねぇ、鏡藍先生」
「…とっておきのハーブティーがあるんだが、飲んでいくか」
 それは口止め料って事だろうか、と聞きたい衝動に駆られたけれど可愛い友人のために聞かないでおいた。
きっととっておきを味わっている間に雨は止んで、綺麗なオレンジ色の空が見られるだろうから。


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